« 調査に必要なスキル(受託側) | メイン | 調査のプッシュ型営業 »

 ・・・ 調査の営業の意味

私のいた会社には、調査の営業部隊がありました。もともと営業ができてナンボの会社でしたから、一般的な調査会社の営業とは、一味も二味も違っていたと思います。

調査の営業は、基本的にはルートセールス。「何かご用命はありませんか?」が大半。取引先がそのまま仕事を発注してくれるのなら、属人的な商売ですから、いくらでも独立できる。それが今、多くの調査会社となっています。ベテラン調査マンがいさえすれば、安心して発注もできますし。
ただ、それにばかり頼っていると、営業マンとしての目標額を達成できない。特に、昨今乱立気味のネット調査会社は、営業マンを多数抱えているところもあるようです。そんな大競争時代に、ルートセールスだけでは生き残れません。

調査を担当し始めて、営業目標をもたされた頃、「調査会社に営業目標は必要なのか」と、よく議論になりました。「火のないところに煙は立つのか」ということで。要は営業がなかなかうまくいかないので、こういうやり方そのものが間違っているのだろうという「逃げ」ですね。
当時は本当に、「無駄だよな……」と思ったこともしばしばでしたが、今にして思えば、「火がなかったら、自ら薪を探してきて、煙を立たせる」と言い切れます。

クライアントの担当者は忙しいものです。特に、バブルが崩壊して、でも少し回復したりして、景気はよくなってきたといわれているけれど、かつてのように、スタッフ人員をザクザク増やすようなことを、経営はしなくなった。日銭を稼ぐ営業マンは、いくらいてもよいけれど、コストがかかるだけのスタッフは、できるだけ少人数でというのが当たり前になっています。
つまり、クライアントの1人にかかる負荷は、以前にも増して重たくなっている。バブルの頃であれば、3人くらいで半年かけてノンビリできた仕事を、今は1人で2ヶ月で結果を出すよう求められる。そんなスピード感に変わったと思います。

だから、担当者はどうしても目先の業務に没頭せざるをえない。その「おこぼれ」を御用聞きとして頂戴しているだけで、十分な売上を稼ぐこともできます。ただ、単なる御用聞きしかできないものは、つまり、クライアントに役立つ情報を提供できない営業マンは、競合他社に優位な部分がない。より優秀な営業マンがいる調査会社。より低価格な金額で受託できる調査会社。ライバル企業に、あっさり負ける可能性があります。

08020104.gif調査会社の営業マンが、真に存在する意味は、クライアントの担当者が、どうしても目先の課題に追われてしまうところを、「長期的な課題について考えてみませんか?」と提案するところだと思います。先方からの発注を、「株を守る」かのように待つだけではいけない。ネタがないのなら、自らクライアントの課題を整理し、「今こういう調査をやれば、将来的に絶対に役に立つ」という提案を投げかける。
調査というのは、客観的な指針となりますから、やって無駄ということは基本的にはありません。禅問答か、もしくは方便しか聞こえないかもしれませんが、「その課題は深く追求しても無駄ということがわかった」という結論もありえます。

自ら提案し、受注できた仕事には、大きなやりがいを感じることができます。これはどこの業界でも同じ。大いなる責任も生じますし、成長を感じることができる瞬間でもあります。
そして、このような仕事を積み重ねることの最大のメリットは、「価格競争に巻き込まれにくくなる」ということです。つまり、ライバルに対する競争優位性が増します。「価格が安いから」「いつも受付窓口に来ているから」、そんな危うい競争から脱却できます。

少し背伸びしたような企画を練るクセをつけないと、人間はなかなか成長できないものです。回転のよい仕事に振り回されるばかりでは、現代の調査会社に最も必要なスピード感は身に付きますが、5年後、10年後の自分にはなかなか役立ちません。また、あまりに目まぐるしい仕事に忙殺されていると、いずれ、「俺はいつまでこんな仕事をしているのだろう?」と迷宮の扉を開けることになります。これだけは避けたい。

クライアントの担当者にとっても、目先の仕事ばかりこなしていては、社内での昇進は見込めない。やりたくても、なかなか取りかかれない。そんなお忙しい担当者に、ちょっとした機会を提供する。そんな意味もあります。
「そんなことやっているヒマはないよ」と黙殺する人であれば、どっちにしろ長いおつきあいをすることにはならないでしょう。でも、「おぉ、ありがとう。こういう企画もたまにはやらないといけないと思っていたんだよ」と応じてくれる方なら、長く、かつ太いおつきあいができるはず。

お客様の役に立ち、かつ自分の成長にもつなげられる。調査という業界は、そこに知的好奇心を盛り込むこともできる。私がなんだかんだと、ここまで調査業界に関わってきている理由は、そんなところにもあります。


« 調査に必要なスキル(受託側) | メイン | 調査のプッシュ型営業 »