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 ・・・ なぜ調査をするのか

マーケティング調査を、なぜ行うのでしょうか? この疑問に明快に答えられる人は、案外少ないのではないでしょうか。
そこにはさまざまな理由があります。さまざまな事情もあります。それが複雑に絡み合うあまり、前提となることが、つい棚の上に置きっぱなしにしがちです。

調査とは、ある対象の状況を正しく把握すること。これは少し思いを巡らせれば、思いつくことでしょう。では、なぜ対象の状況を正しく把握する必要があるのでしょうか。

今の日本では何とも思わないでしょうが、公正な政治を行うために、調査は欠かせないものなのです。
国連PKO(Peacekeeping Operation)には、当該国の治安を維持するだけでなく、選挙が正しく行われるか監視する役割もあります。過去に、東ティモールで、日本の部隊がその役割を果たしています。
公正な政治を行うためには、公正な選挙に基づいて行われなければいけないのは当然です。そして、公正な選挙を行うためには、公正な調査が行われなければいけないのも、また当然であります。どのエリアに何人の有権者が居住しているのか。それを把握することが、公正な政治の第1歩ということです。都合のいい人ばかりが投票した結果、当選した候補者など信用できるはずがないですから。
政治に調査が使われた一例として、ナチスがあげられます。彼らはユダヤ人の状況を把握するために、コンピュータを用いたそうです。使われたのは、アメリカのIBMのコンピュータでした。IBM社として、大きな売上となった反面、暗い過去となってしまいました。

調査をする理由の筆頭は「客観性」だと私は考えます。
人間はどうしても、我田引水しやすい。我が子は可愛く思えるものだから、致し方のないことではあります。冷静な判断を下すことが難しいケースは、とても多いのです。

剣豪宮本武蔵は、「観見二眼」という言葉を残しておりますが、対象物を「見る」ことは、視力さえあれば誰でもできます。ただ「観る」ことは難しい。「観る」は、観察という言葉から類推できるように、身体器官としての目ではなく、いわば「心の目」「脳の目」で見るといったイメージです。それは誰もができるものではない。
そこで、調査の登場です。
調査を適切に用いれば、客観的に対象物を観ることができる。調査の実施理由は、基本的にここにあります。

国の存立基盤たる政治のために、調査が正しく行われるのは当然であると誰もが考えるでしょうが、一般の市場調査も、同様に高いレベルの倫理観をもって行われなくてはなりません。恣意的な調査設計、集計データの事後解釈など、簡単にできてしまうことです。ましてや、実査から集計・分析まで、すべてデジタルで処理することが可能となった今、調査の世界にも偽装は容易に起こりえます。だからこそ、調査に関わる人間には、ある種の潔癖さも求められるべきです。

と、ここまで書いてきたことは、「勘どころ」でも何でもなく、通常の説明です。「勘どころ」にあたる部分は、ここから先です。

「マーケティング調査を行う理由」として、現実的に最も多いのは、「説得性を高める」ということです。苦労して考えた新製品のアイディアを、自らの思い込みだけで、トップを説得できるはずがない。自らの企画をサポートしてくれる、裏付けとなるデータが必要。そんな時に調査は行われます。
そういった意味からすると、データの客観性というよりも、発注担当者の思惑通りの結果であることが求められることもあります。市場調査会社も、潔癖さを求められつつ、顧客ニーズにも応えなければいけない。難しい立場に立たされます。

説得性を高めるということを、反対側から見つめなおすと、部下からの提案に説得性がないということです。つまり、「担当者を信用できない」のです。入社してからの経験が浅く、自社の市場環境を正確に把握できていない。だから、かなり斬新な提案をあげてきたけれど、本当にどこまで信用してよいやらわからない。そういった、上司としての「不安を解消する」ために調査が行われることがあります。いや、もしかしたら、企業の製品開発、広告効果測定で、完全にルーチンとなっている調査は、こちらの理由の方が大きいかも知れません。

ここで必要なのは、客観性とともに、「上司の感覚値にマッチしたデータ」という点。調査の決裁を行うのは上司ですから。
問題となるのは、市場の実勢と上司の感覚値に乖離がある場合です。上司も元は現場で揉まれていたのでしょうが、今はすっかり遠のいてしまった。「これはおかしいだろう?」「俺が現場でやっていた頃はこうじゃなかった」。10年以上前の感覚を保持したまま、現状を見ようとすると、大いなる誤謬が生まれます。そして、その誤謬は、マーケティング戦略の失敗につながります。
上司をコントロールできる能力を持った調査担当者であれば、うまく乗り切ることは可能ですが、言われるがままのロボット担当者だと、プロジェクトに関わる人間全員に不幸が訪れます。だからこそ、調査担当者は真の意味で優秀さが求められると思うのです。
辛いですからね。すべて結果が出た後に、「これはおかしいだろ?」と鶴に一声鳴かれるのは。

調査に関わる立場として、どのようなポジションに自分は位置するのか。それを常に頭に入れつつ、その調査が社内でどんな意味をもって実施されるのかを把握しておかなければなりません。

 

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