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 ・・・ 調査のプッシュ型営業

「勘どころ」の話から、少しはずれるかもしれませんが、調査の営業をやっていて、なかなか面白い経験がありますので、それを2つほど。

前項に書いたように、そうはいっても調査の営業は、「火のないところに煙は立ちにくい」ので辛いことが多いです。とはいえ、私のいた会社では、業界に珍しく、プッシュ型営業をしておりました。要するに、顧客に積極的に提案していく営業スタイル。これを「押し売り」と感じてしまうと、だんだん自分がイヤになってくるのは、どの業界でも同じ。ただ、私のいた会社では、「営業=プッシュ型」で、暢気に構えていられる営業など、誰一人おりません。だから、それが普通でした。

だから、調査の営業も、常に何かしていなければならない。「今日は仕事がないからおやすみ」などという日はなし。仕事がないなら、自ら探しに行く。営業として当然のことです。
とはいえ、「火のないところ」に訪問するには、何かきっかけが必要。そのために、よく自主的なちょっとしたデータをお土産にしたものです。

そんな方法で、何社か訪問していたうち、ある1社にかなりの頻度で通っておりました。その会社は、その業界では中堅規模。しかし、テレビコマーシャルをかなり打っていたので、「これは何か調査ニーズがあるだろう」ということで、あれこれ提案をしておりました。
ところが何を提案しても、のらりくらり。端的にいえば、一般が思うほど、調査予算を取っていない会社でした。でも、そこであきらめては営業ではない。私は、毎月ではないですが、数ヶ月に一度くらいのタイミングで通っておりました。

するとある日、その会社の調査課長から電話があり、「ちょっと打ち合わせをしたい」とのこと。
こちらとすれば、ようやく苦労が花開く時が来たということで、うきうきしてきます。打ち合わせの内容は、こちらが提案したことではなく、先方の新たな課題。でも、そんなこと関係ありません。仕事をいただければいいのですから。リピート営業の喜びと、新規営業の喜びは、全く異なります。新規で、ようやく初受注できたときの喜びは、リピート受注の5倍、いや10倍以上かもしれません。

ただ、先方もどうして、うちに仕事を発注してくれたのか、そこが疑問でした。企画のよさを認めてもらったのではないですからね。営業としては気になります。
仕事を納品したある日伺ってみると、こんな理由でした。

「いや、うちはこんな会社だけど、結構いろいろな会社が、仕事やりませんかって来るんだよね。でも予算がないから、すべて断っていたんだ。で、あまりにも断りまくっていたら、次第に誰も来なくなっちゃった。で、最後に残ったのがあなただったんだよ」

この会社とは、その後数年間に渡って、太く仕事をいただきました。でも、きっかけはこんなことだった。根性営業の教科書に載りそうな話です。実話です。調査の営業にも、こんなことがあるというお話です。今から10年と少し前の話です。

もう1つは、ダイレクトメール。こちらは、もう少し前、12年くらい前の話です。

火のないところに煙は立たないのですから、DMなどやっても無駄というのも、調査業界の定説。実際、何度かDMをやったことがありましたが、いずれもなしのつぶて。ただ、これが一度だけ当たったことがありました。当たったといっても、わずか1つの会社からお仕事をいただいたのですが。

それは、「調査をしませんか?」というDMではなく、「お手元に眠っている調査票(いわゆる原票)はありませんか?」というもの。
今でいえば、何てことのない「データマイニング」です。でも、当時はそんな言葉は使っておりませんでした。「何か企画を考えよ」と命じられて、苦労の末に考えたものでした。
この話に、あるファッション系の会社がのってくれました。嬉しかったですね、物凄く。定説を覆したという感じで。もっとも、受注額は小さかったので、覆したとは言えませんが。

肝心なのは、その先で、結果的にこの会社とも、その後2年間くらいおつきあいさせていただきました。その話は、その会社の各店舗の満足度調査をやるというもの。データマイニングの話がきっかけとなり、リレーションが生まれ、普通の調査企画の話になる。リピート受注が、調査業界の基本スタイルだとしても、どこかにスタートラインがあるはず。そのスタートラインは、「企画」から始まるのではなく、「データマイニング(≒集計)」といった、調査工程の途中部分から始まることもある。そんなことに気づいた仕事でした。

どちらも効率の悪い仕事で、こればかりを追い求めていたら、とてもやっていけません。ただ、リピートばかりでは、いつかは先細りする。適度な新規受注は、常に必要。
そのために、ちゃんとリピートいただける仕事の合間をみて、こういう新規営業を組み入れていくということが大切です。


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 ・・・ 調査の営業の意味

私のいた会社には、調査の営業部隊がありました。もともと営業ができてナンボの会社でしたから、一般的な調査会社の営業とは、一味も二味も違っていたと思います。

調査の営業は、基本的にはルートセールス。「何かご用命はありませんか?」が大半。取引先がそのまま仕事を発注してくれるのなら、属人的な商売ですから、いくらでも独立できる。それが今、多くの調査会社となっています。ベテラン調査マンがいさえすれば、安心して発注もできますし。
ただ、それにばかり頼っていると、営業マンとしての目標額を達成できない。特に、昨今乱立気味のネット調査会社は、営業マンを多数抱えているところもあるようです。そんな大競争時代に、ルートセールスだけでは生き残れません。

調査を担当し始めて、営業目標をもたされた頃、「調査会社に営業目標は必要なのか」と、よく議論になりました。「火のないところに煙は立つのか」ということで。要は営業がなかなかうまくいかないので、こういうやり方そのものが間違っているのだろうという「逃げ」ですね。
当時は本当に、「無駄だよな……」と思ったこともしばしばでしたが、今にして思えば、「火がなかったら、自ら薪を探してきて、煙を立たせる」と言い切れます。

クライアントの担当者は忙しいものです。特に、バブルが崩壊して、でも少し回復したりして、景気はよくなってきたといわれているけれど、かつてのように、スタッフ人員をザクザク増やすようなことを、経営はしなくなった。日銭を稼ぐ営業マンは、いくらいてもよいけれど、コストがかかるだけのスタッフは、できるだけ少人数でというのが当たり前になっています。
つまり、クライアントの1人にかかる負荷は、以前にも増して重たくなっている。バブルの頃であれば、3人くらいで半年かけてノンビリできた仕事を、今は1人で2ヶ月で結果を出すよう求められる。そんなスピード感に変わったと思います。

だから、担当者はどうしても目先の業務に没頭せざるをえない。その「おこぼれ」を御用聞きとして頂戴しているだけで、十分な売上を稼ぐこともできます。ただ、単なる御用聞きしかできないものは、つまり、クライアントに役立つ情報を提供できない営業マンは、競合他社に優位な部分がない。より優秀な営業マンがいる調査会社。より低価格な金額で受託できる調査会社。ライバル企業に、あっさり負ける可能性があります。

08020104.gif調査会社の営業マンが、真に存在する意味は、クライアントの担当者が、どうしても目先の課題に追われてしまうところを、「長期的な課題について考えてみませんか?」と提案するところだと思います。先方からの発注を、「株を守る」かのように待つだけではいけない。ネタがないのなら、自らクライアントの課題を整理し、「今こういう調査をやれば、将来的に絶対に役に立つ」という提案を投げかける。
調査というのは、客観的な指針となりますから、やって無駄ということは基本的にはありません。禅問答か、もしくは方便しか聞こえないかもしれませんが、「その課題は深く追求しても無駄ということがわかった」という結論もありえます。

自ら提案し、受注できた仕事には、大きなやりがいを感じることができます。これはどこの業界でも同じ。大いなる責任も生じますし、成長を感じることができる瞬間でもあります。
そして、このような仕事を積み重ねることの最大のメリットは、「価格競争に巻き込まれにくくなる」ということです。つまり、ライバルに対する競争優位性が増します。「価格が安いから」「いつも受付窓口に来ているから」、そんな危うい競争から脱却できます。

少し背伸びしたような企画を練るクセをつけないと、人間はなかなか成長できないものです。回転のよい仕事に振り回されるばかりでは、現代の調査会社に最も必要なスピード感は身に付きますが、5年後、10年後の自分にはなかなか役立ちません。また、あまりに目まぐるしい仕事に忙殺されていると、いずれ、「俺はいつまでこんな仕事をしているのだろう?」と迷宮の扉を開けることになります。これだけは避けたい。

クライアントの担当者にとっても、目先の仕事ばかりこなしていては、社内での昇進は見込めない。やりたくても、なかなか取りかかれない。そんなお忙しい担当者に、ちょっとした機会を提供する。そんな意味もあります。
「そんなことやっているヒマはないよ」と黙殺する人であれば、どっちにしろ長いおつきあいをすることにはならないでしょう。でも、「おぉ、ありがとう。こういう企画もたまにはやらないといけないと思っていたんだよ」と応じてくれる方なら、長く、かつ太いおつきあいができるはず。

お客様の役に立ち、かつ自分の成長にもつなげられる。調査という業界は、そこに知的好奇心を盛り込むこともできる。私がなんだかんだと、ここまで調査業界に関わってきている理由は、そんなところにもあります。


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