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 ・・・ スケジュール

調査のスケジュールを厳密に考えれば、初回の営業アポイントから、報告書を納品した時、もしくは報告会までとなります。ただ、現実的には、調査票の設計が始まって、報告書(らしきもの)がとりあえず完成するまでではないでしょうか。
報告書について、「らしきもの」「とりあえず」などと、あやふやなことを書いたのは、それ相応の理由があります。実際に担当してみると、報告書はなかなか完成しないことがあります。クライアントさんが、完璧な報告書を求める場合、章立てや提言など、事細かに指定してくることがあります。官公庁、もしくはそれに準ずる組織が多いでしょうか。
ただ、担当する自分としては、手を抜くのではないのですが、事実上の「終わった感」が漂い始める時があります。それは、これ以上ブラッシュアップすることは、現実的でないくらいの内容になったというのに、まだ細かい、それこそ誤字・脱字・ニュアンスレベルの修正をしてくること。こうなると、どんより感が漂ってきますね。

08030701.gif「調査票設計」のところで書きましたが、全体のスケジュールをどのように考えたらよいのでしょうか。だいたいの目安は、右のようなところではないでしょうか。

調査票設計に1週間くらいかけつつ、その間に実査準備をしておく。ネット調査であれば、1週間で大丈夫ですが、仮に訪問留置調査をする場合には、最低でも3週間は見ておく必要がありましょう。また、グループインタビューであれば、リクルーティング条件によりますが、2週間以上あった方がゆとりが持てます。

実査期間は、もちろんそれぞれの手法しだい。ネットであれば、最短1日、最長でも1週間はかかりません。ただ、条件にあった回答が集まらない場合は、回答を得やすい曜日(おおむね週末)を、もう1回はさむこともあるので、それだけでプラス1週間かけることもあります。

実査が終了してから、集計データを提出するまでは、多くの調査会社内では、担当が変わるはず。実査担当から、集計・分析担当へ移行します。ここをうまくつながないと、無駄な時間がかかります。
集計までの時間は、この10年で、最も劇的に変わりました。以前は、こうでした。

●事前にどういうクロス集計を出すか、打ち合わせする。
●集計仕様を書く。
●仕様を集計会社に渡す。
●ローデータが集計会社に渡る。
●集計データがアップされる。(→集計ミスがあればやり直す)
●クライアントに提出する。

これをだいたい1週間くらい見ておりました。でも、今はこんな作業はしません。
1発目のアウトプットは基本的なところにとどめます。とはいえ、「これは最低必要だよな」というクロス集計は、当然入れておきますが。私の場合、自分ですぐ集計ができますし、打ち合わせにもパソコンを持っていくので、いざとなればその場で追加集計も可能です。だから、ローデータがアップする前に、集計ソフトを設定しておけば、クロス集計を出すのは、最短2時間もあれば提出できる。今は、メールで送って、確認してもらうことも可能ですから、随分とラクになりました。

データがアップしてから、報告書の完成形イメージをクライアント企業と共有したら、いざ図表作成を開始する。
といいたいところですが、ここは結構時間がかかります。追加集計、またさらに複雑な解析などもすることがありますので、表では1週間しかみておりませんが、全体の流れ次第では、1ヶ月くらいかかっても不思議ではありません。

図表作成も、今はかなりシステム化されているので、時間が短縮できるようになりました。ここで時間を短縮する最大のコツは、集計ともリンクするところです。コメント付けは、調子に乗ってくれば、1日から2日で完成させることも可能のはず。図表作成・コメント付けなどの詳しいところは、後述いたします。

調査票設計から、だいたい1ヶ月というのを標準ですが、これはあくまでも1本ずつの仕事をゆとりをもって担当できる場合。実際には、1週間で集計データを納品しなければならないなんてこともしょっちゅうあります。そういったケースは、設問の量が少ない場合が多いはず。ですから、集計の手間は相当に削減できる。ですから、いかに内部体制をロスなく進めるかに注力しなければなりません。
仮に、そういう超短期の調査が多いのであれば、仕事の分担を「流れ作業方式」から、いわゆる「セル生産方式」に変えることも考えるべきでしょう。調査に限らず、スケジュールが長くなる最大の要因は、人から人への伝達、または打ち合わせ。これをなくすには、1人で完結して業務にあたるしかありません。当然、個人のスキルは、あらゆる分野に、より高いレベルのものが要求されますが、人材の育成からみて、初級レベルから中級~上級レベルに上達するには、1人で自己完結して仕事をすることだと、私は考えます。

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 ・・・ 調査費用のしくみ

せっかくいただいた案件が、予算で折り合わない。しばしばあることです。
発注担当者の問題意識が旺盛。素晴らしい。自社製品の問題点を詳細に調べたい。ライバル商品についても、この機会に詳しく調べたい。ついでに製品市場そのものについてユーザーがどのように考えているのかも把握し、次期新製品開発につなげたい。でも自分に使える予算は30万円。
無理です。
某ネット調査会社の料金体系をみると、30万円で調査できるのは、「サンプル数×設問数」で「300サンプル、25問」「500サンプル、15問」「900サンプル、5問」。若干値引きなどしていただいて、これができる範囲。ただしこれはいわゆる「システム利用費」のみの料金。調査票設計、細かい集計はすべて自分でやるという前提です。

ここがまず第一の誤解が生まれるポイント。ネット調査会社の料金表をみると、細かい利用料金は当然いろいろと書いてあります。法律的な問題になりますからね。
ただ、調査経験のある私でも、「あれ、それも費用が別にかかるの?」ということがある。例えば、これは結構モメたことがあったのですが、「ローデータを作成する費用」が取られることがあります。
私は、自分で集計ができますので、クロス集計データは不要。入力されたままの、昔でいうパンチデータ、最近ではローデータのままでよい。そのローデータは、Webとパソコンの仕組みさえわかっていれば、どうやって作られるのかはわかる。ダウンロードボタンを押すだけです。それを作成するのに5万円取る会社がありました。「これおかしくない?」と文句を言いました。最終的には、総額で「調整」してもらいましたが、こういうことがあります。

「そんなところで儲けようとしなくてもいいでしょう?」と言いたいところですが、現在のネット調査会社は、そういう料金体系のところが多い。大量の調査モニターを利用してアンケート調査をする部分は、見た目には低料金になっていますが、それだけでやりきれる会社は少ない。ただ、人力を経ないといけない部分の費用を見込まないと、経営的に圧迫されます。実際に人が動いているのに、その人的費用は十把一絡げの中にあるのでは、作業費が見えにくくなりますから。

調査費用は、おおむね次のように分けられます。

●「企画費」=企画書作成、調査票作成、その他実務進行上かかる人的費用など
●「実査費」=モニター使用料、モニター謝礼、システム構築費など
●「集計費」=ローデータ作成、クロス集計など
●「分析費」=レポート作成など

今のネット調査会社の料金は、「実査費のすべて」と「集計費の一部」までで体系化されている。ここを理解していただかないと、クライアントとモメる要因になります。

インターネットを用いて調査をすることが可能になり、劇的に変わったのは、「スケジュール」と「費用」。スケジュールは後述しますが、費用はどうして下がったのかを考えると、調査のブラックボックスが見えてきます。
調査費用で最もかかるのは、調査対象者をどうやって探してくるかという点。そしてその対象者に支払う協力謝礼。この2つです。今までは、調査員が1件1件家庭を訪問したり、街頭でキャッチすることで、それを補ってきました。ところが、いずれにしろ莫大な費用がかかっていた。
ところが、インターネットユーザーをモニター化することで、まず探索する手間が省けた。ネットであれば、メールとWebを組み合わせて、クライアントに指定された条件の対象者を抽出することも容易です。謝礼費は、調査分量により、ポイント制にするなどして、かつての「一律1000円分の図書券」とか、「郵送による謝礼品発送」という費用もかからなくなりました。

とてもありがたいネット調査ですが、費用がクリアになった反面、売上の限界は見えてきます。つまり、「企画費」「分析費」といった、従業員のノウハウを切り売りする部分を増やしていかないと、受注単価はあがってこない。
ところが、若い従業員が多い会社ですと、実務経験はおろか、業界知識なども甘い従業員が当然多いということになる。未熟なノウハウしか持っていない人間しかいないのに、ノウハウで稼がねばならない。大いなる矛盾がここにあります。

受託する側の感覚として、「実査費」「集計費」で稼ぐ認識はない。作業を進行する上で、若干の費用を上乗せすることはあっても、それは手数料的な感覚にすぎません。「企画費」「分析費」をどれだけいただけるかが、その人のマーケティングリサーチャーとしてのスキルといえます。
そして、これがまた難しい。
どの業界もそうですが、「人件費」をちゃんと考えてくれるご担当者に出会えるかどうか。これですね、すべては。

受託する側の感覚としては、1ヶ月で終了する調査であれば、費用総額からみて、30%くらいの利益が出ればありがたい、モチベーションも上がるというところでしょうか。3ヶ月くらいかかるのであれば、50%は欲しい。
もちろん、これは発注者側との力関係の方が大きく作用するところであります。

「見積書」とは、会社としての、調査マンとしてのプライドの現れ。それを叩くだけしかノウがない人とは、あまりつき合いたくないものです。

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 ・・・ 調査票設計能力の肝

調査を担当するリサーチャーが蓄積すべき経験とは、まずは調査票のひな形をいくつ持っているかということ。おそらく、調査を100本くらい経験すれば、世の中の実査パターンがいくつかに限定されることに気づくはずです。
そしてそのパターンとは、以下の5つだと思います。

  • 製品コンセプト調査
  • 新商品市場浸透度調査
  • 製品評価調査
  • 広告効果測定調査
  • 広告評価調査

回転率の高い商売をしたいのなら、この5パターンのいずれかを実施してくれる企業に食い込まないといけません。
回転率が高いとは、すなわち売上が向上することです。つまり「質より量」です。もちろん低品質の調査をするということではなく、リサーチャーとしての満足度の質です。前に書いたハイレベルな仕事は、ハイレベルな満足感をもたらしてくれるものですが、そればっかりでは、売上が追いつきません。だから回転率も高めていかないと営業として、会社としてやっていけません。

20201.gif調査票を設計する具体的方法として、よく「ストーリーを考える」ということがあります。要は、常識的な人間の思考順序に沿って、流れを作るということ。これは当然です。いきなり結論から入る小説がないのと同様です。

巷で多く行われる実査パターンは5つと書きましたが、調査票のパターンを最も大きく捉えれば、右記の3つでしょう。調査テーマを目的変数、テーマに対する回答者の背景、個人プロフィールを説明変数ということもできます。
調査テーマについて、調査票にブレイクダウンすることは、さほど難しくはないでしょう。発注担当者の調査意図が明確であれば、それを設問に置き換えるだけです。製品関係の調査であれば、「購入意向」「購入意向理由(非意向理由)」の2つが最重要重視点です。この部分に時間をかけているようでは、設計の時間短縮は期待できません。

20202.gifリサーチャーの能力が問われるのは、テーマを挟んだ前後の部分、説明変数となる設問をどれだけ考えられるかにかかっているといっても過言ではないでしょう。この部分のアイディアをどれだけ持っていて、どれだけテンポよくアイディアを出せるかが、リサーチャーの優劣につながります。

例えば、「緑茶飲料」の新製品の調査の依頼があったとして、「日常的に引用する緑茶飲料ブランド」「好きな緑茶飲料ブランド」「緑茶飲料の飲用シーン」「日常的な緑茶の飲用頻度」「他の飲料の飲用頻度」くらいは考えついて当然。問題は、緑茶飲料には縁遠い分野と思われることに気づけるかです。
その緑茶飲料のターゲット層が、誰なのかによっても変わってきますが、例えば、「緑茶の生産地イメージ」から入って、その生産地が抱える他産品とのイメージポジションの違いに進んでいくということもあります。また、「緑茶飲料と一緒に食べるお菓子類」から、ターゲット層がどんな喫食をする人で、飲料だけでなく、食事全体の中での緑茶飲料の位置づけをみるということもできましょう。
さらに一歩進んで、緑茶飲料の止渇性に着目して、「汗を流すシーン」を設問に組み込むこともありえるでしょう。スポーツドリンクの市場を奪い取るコンセプトがあるのなら、十分に考えられます。

この能力を鍛えるには、さまざまなことに日頃から注意を払うだけでなく、「風が吹けば儲かる桶屋がいる」ことに思いを馳せなければいけません。「風」と「桶屋」の連関性が濃いであろうという仮説を立て、それを実証する。もちろん、仮説は1つではなく、複数呈示しておかないと不安です。そのための情報収集であり、仮説設定する癖をつけておくということです。

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 ・・・ 調査票の作成時間

いよいよ調査の核心部分に入ります。どのような順序で書いたらよいかわからないですが、まずは調査票から。実際の企画場面では、予算の話から入ったり、スケジュールから入ることも多々ありますが、そういうった現実的すぎる内容は、後回しにしましょう。

調査票を作る方にお聞きしたいのですが、調査票を作成するのに、お客様にどのくらいの期間をいただきますか? 1週間? それとも3日?
余裕のある仕事であれば、1週間という方が多いのではないでしょうか。質問紙で行う実査の場合、どんなテーマであろうと、調査票作成に1週間以上もかかる会社は能力が低いと考えてよいでしょう。

ところで、先日こんなことがありました。
革靴のカカトに金具をつけてもらおうと思って、修理屋さんに持って行きました。かなり立て込んでいたようで、注文の靴がわんさと積まれている。受付・修理などすべての作業を1人でやる店ですから、忙しそうです。「どのくらいかかりますか?」と尋ねたら、「1時間後に来てください」とのことでした。
1時間と少々の時間をみて、お店に行ってみました。こういう時に、1時間きっかりに行くのは野暮というものですから、ちょっとバッファを見て行きました。
ところが、店員さんは、「あ、忘れてた!」と。見たところ、私の後にも次々とお客さんが訪れたようで、もうてんてこまい。そこで店員さんが何と言ったかというと、こういうことです。

「ちょっと待っててください。5分でできますから」

どんな仕事でもそうだと思いますが、お客様に対し、ブラックボックスにしている部分にこそマル秘テクがあります。また、そこをついて新しい事業を始めることもあるでしょう。
調査票作成も、また後ほど書くことになる集計・分析なども、すべて靴修理屋さんと同じことです。お客様に1週間と伝えておいて、その隙間の時間に、別の仕事を埋めていく。スピード感重視のリサーチ会社は、どこもそうなのではないでしょうか。

調査票作成に1週間以上かかる会社は能力が低いと書きましたが、実務面から考えれば、調査票設計に3時間以上かかる人は、やはりちょっと問題があると考えてよいでしょう。もちろん、調査の分量が多い場合や、似たような調査票をいくつものパターン分作らねばならない場合は別です。
また、3時間というのは、単なる感覚値であって、普通の、例えば30問くらいの調査票設計であれば、1時間くらいで作らねばいけません。そうでないと、次々と襲いかかってくる仕事に対処できないはずです。

では、1時間で作るにはどうしたらよいか。これはもう、長年の経験しかありません。では、リサーチャーが蓄積すべき経験とは何か。具体的にいえば、それは「調査票のひな形」でしょう。調査票のひな形をいくつ持っているか。パソコンの中だけでなく、頭の中にどれだけのパターンの調査票が入っているか。これが作成時間を短縮するための最大のポイントです。

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 ・・・ 調査のプッシュ型営業

「勘どころ」の話から、少しはずれるかもしれませんが、調査の営業をやっていて、なかなか面白い経験がありますので、それを2つほど。

前項に書いたように、そうはいっても調査の営業は、「火のないところに煙は立ちにくい」ので辛いことが多いです。とはいえ、私のいた会社では、業界に珍しく、プッシュ型営業をしておりました。要するに、顧客に積極的に提案していく営業スタイル。これを「押し売り」と感じてしまうと、だんだん自分がイヤになってくるのは、どの業界でも同じ。ただ、私のいた会社では、「営業=プッシュ型」で、暢気に構えていられる営業など、誰一人おりません。だから、それが普通でした。

だから、調査の営業も、常に何かしていなければならない。「今日は仕事がないからおやすみ」などという日はなし。仕事がないなら、自ら探しに行く。営業として当然のことです。
とはいえ、「火のないところ」に訪問するには、何かきっかけが必要。そのために、よく自主的なちょっとしたデータをお土産にしたものです。

そんな方法で、何社か訪問していたうち、ある1社にかなりの頻度で通っておりました。その会社は、その業界では中堅規模。しかし、テレビコマーシャルをかなり打っていたので、「これは何か調査ニーズがあるだろう」ということで、あれこれ提案をしておりました。
ところが何を提案しても、のらりくらり。端的にいえば、一般が思うほど、調査予算を取っていない会社でした。でも、そこであきらめては営業ではない。私は、毎月ではないですが、数ヶ月に一度くらいのタイミングで通っておりました。

するとある日、その会社の調査課長から電話があり、「ちょっと打ち合わせをしたい」とのこと。
こちらとすれば、ようやく苦労が花開く時が来たということで、うきうきしてきます。打ち合わせの内容は、こちらが提案したことではなく、先方の新たな課題。でも、そんなこと関係ありません。仕事をいただければいいのですから。リピート営業の喜びと、新規営業の喜びは、全く異なります。新規で、ようやく初受注できたときの喜びは、リピート受注の5倍、いや10倍以上かもしれません。

ただ、先方もどうして、うちに仕事を発注してくれたのか、そこが疑問でした。企画のよさを認めてもらったのではないですからね。営業としては気になります。
仕事を納品したある日伺ってみると、こんな理由でした。

「いや、うちはこんな会社だけど、結構いろいろな会社が、仕事やりませんかって来るんだよね。でも予算がないから、すべて断っていたんだ。で、あまりにも断りまくっていたら、次第に誰も来なくなっちゃった。で、最後に残ったのがあなただったんだよ」

この会社とは、その後数年間に渡って、太く仕事をいただきました。でも、きっかけはこんなことだった。根性営業の教科書に載りそうな話です。実話です。調査の営業にも、こんなことがあるというお話です。今から10年と少し前の話です。

もう1つは、ダイレクトメール。こちらは、もう少し前、12年くらい前の話です。

火のないところに煙は立たないのですから、DMなどやっても無駄というのも、調査業界の定説。実際、何度かDMをやったことがありましたが、いずれもなしのつぶて。ただ、これが一度だけ当たったことがありました。当たったといっても、わずか1つの会社からお仕事をいただいたのですが。

それは、「調査をしませんか?」というDMではなく、「お手元に眠っている調査票(いわゆる原票)はありませんか?」というもの。
今でいえば、何てことのない「データマイニング」です。でも、当時はそんな言葉は使っておりませんでした。「何か企画を考えよ」と命じられて、苦労の末に考えたものでした。
この話に、あるファッション系の会社がのってくれました。嬉しかったですね、物凄く。定説を覆したという感じで。もっとも、受注額は小さかったので、覆したとは言えませんが。

肝心なのは、その先で、結果的にこの会社とも、その後2年間くらいおつきあいさせていただきました。その話は、その会社の各店舗の満足度調査をやるというもの。データマイニングの話がきっかけとなり、リレーションが生まれ、普通の調査企画の話になる。リピート受注が、調査業界の基本スタイルだとしても、どこかにスタートラインがあるはず。そのスタートラインは、「企画」から始まるのではなく、「データマイニング(≒集計)」といった、調査工程の途中部分から始まることもある。そんなことに気づいた仕事でした。

どちらも効率の悪い仕事で、こればかりを追い求めていたら、とてもやっていけません。ただ、リピートばかりでは、いつかは先細りする。適度な新規受注は、常に必要。
そのために、ちゃんとリピートいただける仕事の合間をみて、こういう新規営業を組み入れていくということが大切です。


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 ・・・ 調査の営業の意味

私のいた会社には、調査の営業部隊がありました。もともと営業ができてナンボの会社でしたから、一般的な調査会社の営業とは、一味も二味も違っていたと思います。

調査の営業は、基本的にはルートセールス。「何かご用命はありませんか?」が大半。取引先がそのまま仕事を発注してくれるのなら、属人的な商売ですから、いくらでも独立できる。それが今、多くの調査会社となっています。ベテラン調査マンがいさえすれば、安心して発注もできますし。
ただ、それにばかり頼っていると、営業マンとしての目標額を達成できない。特に、昨今乱立気味のネット調査会社は、営業マンを多数抱えているところもあるようです。そんな大競争時代に、ルートセールスだけでは生き残れません。

調査を担当し始めて、営業目標をもたされた頃、「調査会社に営業目標は必要なのか」と、よく議論になりました。「火のないところに煙は立つのか」ということで。要は営業がなかなかうまくいかないので、こういうやり方そのものが間違っているのだろうという「逃げ」ですね。
当時は本当に、「無駄だよな……」と思ったこともしばしばでしたが、今にして思えば、「火がなかったら、自ら薪を探してきて、煙を立たせる」と言い切れます。

クライアントの担当者は忙しいものです。特に、バブルが崩壊して、でも少し回復したりして、景気はよくなってきたといわれているけれど、かつてのように、スタッフ人員をザクザク増やすようなことを、経営はしなくなった。日銭を稼ぐ営業マンは、いくらいてもよいけれど、コストがかかるだけのスタッフは、できるだけ少人数でというのが当たり前になっています。
つまり、クライアントの1人にかかる負荷は、以前にも増して重たくなっている。バブルの頃であれば、3人くらいで半年かけてノンビリできた仕事を、今は1人で2ヶ月で結果を出すよう求められる。そんなスピード感に変わったと思います。

だから、担当者はどうしても目先の業務に没頭せざるをえない。その「おこぼれ」を御用聞きとして頂戴しているだけで、十分な売上を稼ぐこともできます。ただ、単なる御用聞きしかできないものは、つまり、クライアントに役立つ情報を提供できない営業マンは、競合他社に優位な部分がない。より優秀な営業マンがいる調査会社。より低価格な金額で受託できる調査会社。ライバル企業に、あっさり負ける可能性があります。

08020104.gif調査会社の営業マンが、真に存在する意味は、クライアントの担当者が、どうしても目先の課題に追われてしまうところを、「長期的な課題について考えてみませんか?」と提案するところだと思います。先方からの発注を、「株を守る」かのように待つだけではいけない。ネタがないのなら、自らクライアントの課題を整理し、「今こういう調査をやれば、将来的に絶対に役に立つ」という提案を投げかける。
調査というのは、客観的な指針となりますから、やって無駄ということは基本的にはありません。禅問答か、もしくは方便しか聞こえないかもしれませんが、「その課題は深く追求しても無駄ということがわかった」という結論もありえます。

自ら提案し、受注できた仕事には、大きなやりがいを感じることができます。これはどこの業界でも同じ。大いなる責任も生じますし、成長を感じることができる瞬間でもあります。
そして、このような仕事を積み重ねることの最大のメリットは、「価格競争に巻き込まれにくくなる」ということです。つまり、ライバルに対する競争優位性が増します。「価格が安いから」「いつも受付窓口に来ているから」、そんな危うい競争から脱却できます。

少し背伸びしたような企画を練るクセをつけないと、人間はなかなか成長できないものです。回転のよい仕事に振り回されるばかりでは、現代の調査会社に最も必要なスピード感は身に付きますが、5年後、10年後の自分にはなかなか役立ちません。また、あまりに目まぐるしい仕事に忙殺されていると、いずれ、「俺はいつまでこんな仕事をしているのだろう?」と迷宮の扉を開けることになります。これだけは避けたい。

クライアントの担当者にとっても、目先の仕事ばかりこなしていては、社内での昇進は見込めない。やりたくても、なかなか取りかかれない。そんなお忙しい担当者に、ちょっとした機会を提供する。そんな意味もあります。
「そんなことやっているヒマはないよ」と黙殺する人であれば、どっちにしろ長いおつきあいをすることにはならないでしょう。でも、「おぉ、ありがとう。こういう企画もたまにはやらないといけないと思っていたんだよ」と応じてくれる方なら、長く、かつ太いおつきあいができるはず。

お客様の役に立ち、かつ自分の成長にもつなげられる。調査という業界は、そこに知的好奇心を盛り込むこともできる。私がなんだかんだと、ここまで調査業界に関わってきている理由は、そんなところにもあります。


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