サントリーオールフリーオールタイムの課題と将来性
ついにPETボトル入りビールテイスト飲料登場
昨日(2018年6月19日)、コンビニ限定で発売となったサントリー「オールフリー オールタイム」。
ペットボトル入りの透明なノンアルコールビールテイスト飲料 「オールフリー オールタイム」コンビニエンスストア限定新発売 2018年5月8日 ニュースリリース サントリー
一時かなり話題となったものの、ここ最近は話題不足に見えたノンアルコール飲料ジャンル。これまでの製品はすべて缶入り。缶だと一度開けたら、持ち歩くことは事実上できない。でもPETならリキャップできる。市場がどのような動きを見せるのか、サントリーに限らず、業界全体が注視している製品といえましょう。
ということで、早速買ってまいりました。
ボトルデザインはかなりかっこいい。持ち歩いても恥ずかしくないのでは。
炭酸系なので、ボトルがかなりしっかりしています。飲み終わった後、水筒代わりに使えそう。
味はやはり苦手
もともとビールヘビーユーザーの自分は、ノンアルコール飲料など不要。以前飲んだ感想としては、「薬品臭」のような、独特の香りが苦手でした。飲む必要がないから、特に購入することもありませんでしたが、以前家族が1本だけもらってきた時には、「焼酎のワリもの」として使いました。こうすると、即席のホッピーのようになるのでオススメです。
さて、「オールフリー オールタイム」ですが、やはり独特の香りはしました。ただ、それほど強くは感じなかった。ボトルに口をつけて、1口目に「ムッ!これは…」という香りがしますが、さらに飲んでみると、それほど感じない。最初の抵抗感さえくぐり抜ければ、それほど問題ないともいえますが、最初に抵抗感があるものを無理して買うこともない。自分はやはりターゲットではないようです。
「オールフリー オールタイム」には、こんなラベルがついています。
これと、もう1パターンありましたが、コピー内容は忘れてしまいました。
お前、なんでビールなんか飲んでいるんだ!
と叱られないための透明化。オフィス需要を喚起しない限り、ノンアルコール飲料の市場拡大はありません。このコピーを見て、「ちょっと部長を試してやるか……」とほくそ笑む方が、どれだけ現れるかに、「オールフリー オールタイム」のヒットはかかっているでしょう。
苦味もついているが
原材料表示はこのようになっております。
「甘味料」と別に「苦味料」という原材料も入っている。でも苦味はほとんど感じませんでした。これを見つけて、飲んでみると、なるほど苦味があるようなないような。ビールらしさが出るのでしょうか?
にぎわう炭酸系市場
実は今、炭酸水市場は伸びています。セブンイレブンにいけば、冷蔵庫にPBの炭酸水、なかには炭酸強めの「強炭酸水」まで売っていて、かなりのフェイスを抑えています。これから暑い時期を迎えると、甘いだけの飲み物より、スッキリシャッキリの炭酸系飲み物が好まれます。その炭酸水市場を牽引するブランドが、アサヒの「ウィルキンソン」。
「ウィルキンソン」ブランド、上期の販売数量が前年比3割増と販売好調!「刺激の強さ」が体感できるサンプリングを7月16日(日)から実施|アサヒ飲料
(2017.7.14 アサヒ飲料プレスリリース)
海外製品ではありません。1904年に日本で生まれた炭酸水の超ロングセラーです。自分も大好きなのですが、コンビニによって取り扱いにかなり差があるのが難点。
アサヒの独走許すまじということで、他社が焦るのは当然。ただし、端的に言えば、
炭酸水で差別化は無理
です。ウィルキンソンは兵庫県・有馬に炭酸鉱泉を発見し、それを瓶詰めしただけのもの。炭酸水としての差別化ポイントは、産地か、炭酸の強度くらいしかありません。
ということで、ライバルメーカーは、フレーバー付き炭酸水で周辺から攻めております。そんなこともあっての、「コカ・コーラ クリア」ということでしょう。
SNS界隈でのコメントでは、「マズい」という声があり躊躇しておりましたが、先日飲んだら、結構美味しかった。無色のコカ・コーラ、そのまんまな感想です。
清涼飲料水に近づけるのか?
飲料と、その飲用シーンを整理してみると、下記のようになるかと。
飲用シーンを、喫食場面と日常(主に職場か)と分け、喫食場面はさらに宴席などのハレとケに分かれる。ビールはハレに登場する代表的飲料。ビールテイストのノンアルコール飲料は、その代用品として登場しました。
ただ、図に示したように、ノンアルコール飲料は、「ケ」の場面ではあまり登場していないように感じます。家で飲むのなら、誰に気兼ねをすることもない。シュワシュワ感が欲しいなら炭酸水でいいし、家庭での食事時に、コーラやサイダーを飲もうが文句を言われる筋合いはありません。だから家庭内需要は、これ以上は伸びにくい。
だからサントリーはオールフリーを無色透明にし、日常場面でも飲みやすいイメージにした。こうなると障害は、
そうまでしてビールテイスト飲料を飲みたいの?
という視線に耐えられるかということになります。自分は正直なところ、日常的にはウィルキンソンなど普通の炭酸水で十分です。
来月にはアサヒも参戦
来月にはアサヒビールが、ドライゼロブランドでPETボトル入りを発売します。
「スパーク」というネーミングからわかるように、炭酸をより強めにしてあります。夏場にウケるようにという意図でしょうが、上記パッケージ写真の最下部にチラッと見えておりますが、こちらはいわゆる「ビール色」のまま。オールタイムオールフリーより、ビールに近い印象を与えます。
アサヒビールならではのシルバー色は、もちろんスーパードライを想起させる。それのPETボトルということで、サントリー・オールフリーオールタイムよりも、職場における問題性(≒話題性)のレベルは高そうです。
サントリーとアサヒによって、ノンアルコール・ビールテイスト飲料の市場は拡大するのか。決着は秋前につくのでしょうか。それまで興味津々です。
問題はどこに置かれるかも
ところで、オールフリーオールタイムは、コンビニではこんなところに置かれておりました。
ビール類の横、既存のノンアルコールブランドの下。右側にはビール以外のお酒。
ここしかないのでしょうか? PETボトル製品なら、清涼飲料の棚に紛れ込ませることはできないのか。だって子供が飲んでも、酔っ払うことはないのですから。「子供に悪影響を与える」という言い訳以外に、置いてはいけない道理はありません。サントリーとアサヒは、この壁さえ乗り越えればいいのですが……。