断片化する社会・1「コンテンツの断片化」

音楽はすでに断片化している

個人が音楽を鑑賞するスタイルは、ここ40年で劇的に変化しました。
ソファに座りながら、大きなステレオで聴くスタイルを変えたのは、1979年発売されたソニーのウォークマン。現在につらなる「好きな音楽をいつでも持ち歩く」というスタイルは、この時はじまりました。

ただ実際に音楽を持ち歩くためには、アナログのレコードを、カセットテープに自力で録音しなければなりませんでした。

その後、レコードはCDとなりデジタル化が進み、録音するメディアは、カセットテープからMDを経て、2000年頃から「ビット・ミュージック」と呼ばれる時代になりました。つまりメディアを必要としない音楽鑑賞スタイル。その標準となったのがアップルのiTunesでした。

iPodのヒットとともに、iTunesも急速に広まりました。そして今では、iPhoneをはじめとするスマホが、事実上の音楽プレーヤーとなったため、iPodは生産中止となりました。

でもiTunesは、コンテンツ販売の場として残っている。当初は楽曲販売を委託しないアーティストもいましたが、今ではそんなこともなくなりました。

1曲ずつ購入する音楽

レコードやCDの時代には、「シングル」と「アルバム」という違いが明確にありました。そしてそれぞれの販売ランキングが発表され、ファンは一喜一憂したもの。今では握手券をつけたり、異なるデザインのバージョンを複数発売することで、販売数を押し上げようとしていますが、そんなグレーなことをしなければいけなくなったのは、1曲単位で購入できるようになったからといえます。

たとえば、全世界で1000万枚以上売れたビートルズの「レット・イット・ビー」を、アルバムとして購入するなら1200円。でも、アルバム・タイトルでもある楽曲「レット・イット・ビー」の1曲だけを聴きたいのであれば、250円ですむ。

今となっては、ごく当たり前のことですが、iTunesの進展とともに楽曲コンテンツは断片化しました。コンテンツをデジタル化することは、断片化を押し進めること。それはもちろん音楽だけに限りません。

一定のページ数が必要なアナログ書籍

なかなか一般には普及しない電子書籍。私も現時点で2冊出しておりますが、売上は全然です。普及にはまだ少し時間がかかりそうですが、業界標準となりつつあるキンドル(Kindle)を提供するアマゾンが、「アマゾン・エフェクト」と呼ばれるほど世界的な躍進を続けているだけに、時間の問題ともいえます。

というのも、アマゾンの提供する電子書籍制作「キンドル・ダイレクト・パブリッシング」が、かなり進化しているから。

書いた文章を電子書籍にするには、少し前は電子書籍オリジナルのファイル形式にしなければなりませんでした。そのためのソフトは数万円。ちょっと手が出ません。
でも今は、マイクロソフト社のワード(Word)で作成した文書を、そのままアップロードするだけで、あとは自動で電子書籍で読めるように変換してくれます。もちろん、読みやすくするためには目次が必要で、ワードでその書式設定をしなければならず、若干のハードルは残っています。

とはいえ、その気になれば、皆さんのパソコンに眠っているちょっとした文章が、電子書籍として売れるかもしれないということは、誰でも著作者になる可能性があるということ。

「そうはいっても、本を書くなんて無理」と考える方は早計です。アマゾンの電子書籍は、最大で8000ページとされていますが、最小ページは規定されていません。

アナログ書籍の場合、販売するには書店に並べなければいけません。売れている書籍なら、平積みしてくれますが、大半は本棚に入れられる。その際、背中が見えて、タイトルがわからなければ、売れるものも売れません。つまりアナログ書籍を販売するためには、一般的には200ページ以上、最少でも150ページほどの厚みがなければ、書籍として成立しない。
しかし、電子書籍はそんなことは気にしなくてよいのです。

書籍も断片化しつつある

読者の立場で考えてみましょう。
小説であれば、全ページ通読することが当然でしょうが、ビジネス書は、必ずしもすべてが必要とは限りません。むしろ、ほんの10ページ分だけを理解できれば、残りは必要ないということがある。それでもアナログ書籍であれば、1冊1500円ほどを支払わなければならない。ビジネス書を買うことが億劫になる理由の一つです。

著者の立場から考えると、実は読者の悩みと表裏一体だったりします。
本当に自分が書きたいことは、50ページ分にすぎなくても、書籍として販売してもらうためには、あと150ページを書かねばならなかった。
しかし電子書籍は、メディアによって画面サイズや文字の大きさが変わってくるので、ページ数の概念がありません。だから、200ページの書籍を1冊として販売するのではなく、章ごとにそれなりのタイトルをつけ、バラ売りすることもできます。

アマゾンでは、シリーズの何巻目であるのかの設定もできます。本来は全集のような何冊にもわたるシリーズもののための機能でしょうが、章ごとのバラ売りも可能なのです。書籍も断片化しているのです。
※実際にはあまりにも少ない文字量だと、アマゾンに認められない可能性があります(アマゾンのキンドル・コンテンツの品質ガイドラインはこちら→Kindle コンテンツの品質ガイド | Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)。

デジタルに曖昧は存在しない

あらゆるものを固定料金で展開するアマゾン。プライム会員になれば、配送料も実質無料。さまざまな映像コンテンツも無料で視聴することができる。
その書籍版が「キンドル・アンリミテッド(kindle unlimited)」。月額980円の読み放題サービスに登録すれば、何百万冊という書籍、雑誌が読めます。

著者としては、アマゾンで電子書籍を発行する時に、このサービスへの公開を登録しておけば、どこかで誰かの目に止まる可能性があるわけです。図書館に献本したような感覚ですが、重要なのは、このサービスに関しても印税にあたる分配金が支払われること。

アマゾンの電子書籍には「Kindle Edition Normalized Page Count」 (略称KENPC)という機能が実装されており、読者が読み進めたページ数がわかる。そして、初回に読み進んだページ数に応じて、分配金が支払われます。

アナログ書籍は一般的には印刷部数に応じて印税が支払われます。実際にどれだけ読まれたのかは、簡単には知りようがありませんでした。極端にいえば、1ページも読まれることがなくても、ミリオンセラー作家となることも可能。ただ、それはやはりおかしい。まるで握手券だけが必要とされ、肝心のCDはゴミとして捨てられるようなものです。

アマゾンは実際にどれだけ売れたかだけでなく、どれだけのページ数が読まれたのかもリアルタイムでわかります。

(クリックで拡大します)

そこには曖昧な世界は存在しません。1冊単位、1ページ単位の「成績表」が突きつけられる。現実を直視するには、これ以上のものはありません。
分配金は全世界ベースで計算されるため、相応の金額を得るには、誰もが知るようなベストセラーにならないといけませんが、それでも何もわからないよりもマシです。

 

Google AdSense2

Google AdSense

   

 - 断片化する社会, 日記 , , , , , , , ,