「弱者の戦略」(稲垣栄洋著)を読んで

三浦番長がEテレに

昨年の引退後、活動の幅を広げているハマの番長こと三浦大輔。

先月ですが、その番長がEテレに出る。「え?なんで?」と思ったら、静岡大学の先生と対談するという。

SWITCHインタビュー 達人達(たち)「三浦大輔×稲垣栄洋」 - NHK

録画して見ましたが、面白かったですねぇ。
ドラフト6位で入った当時全くの無名であった三浦大輔投手を、「雑草」に見立てて、雑草研究の第一人者である稲垣栄洋先生が、その「生存戦略」を語る。ありがちといえば、そうなのかもしれませんが、雑草の生き方になぞらえるのは、番長だけでなく、人間そのものでもありました。

「踏まれても折れない形に姿を変える」「ライバルとの競争を避ける」「一人勝ちは許されない」など従来のイメージを覆し、人間社会への示唆にも富んだ雑草の世界が見えてきた。
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「三浦大輔×稲垣栄洋」 - NHKより)

Amazonで調べてみると、稲垣先生は何冊も本を書かれている。中には、すでに絶版と思われ、お高いのもあったり……。その中で、Kindle版もあった新潮選書のこれを買ってみました。

小さな角のカブトムシが生き残る理由

今回自分が書いた「神視点マーケティング」は、その名のとおり、視点をいかに広げるか、変えるかということがテーマ。要するに、画期的なクルマを作ろうと思うなら、クルマのこと以外のことにも視野を広げなければダメということ。専門以外の幅広い教養を身につけることが、多彩な視点を確保することにつながるのです。

その点、「弱者の戦略」はまさにそうしたことを裏付けてくれる内容でした。「戦略」とタイトルにつけるくらいの本ですから、経営戦略に当てはまるところも多かろうと思っておりましたが、経営戦略どころか、マーケティングにも当てはまることがたくさん書いてありました。

例えば「小さな角のカブトムシ」の話。

オスのカブトムシは、自分のエサ場を守るために、他のオスと角を使って戦う。角が大きい方が当然有利に決まっている。ところがカブトムシのオスには、角の小さな個体もいる。そして、中間の大きさの個体は少ない。
人間は、日本人男性であれば身長は170cm前後が平均。大きい人であれば、2mを超す人はいるけれど、ごく限られる。反対に150cm台の小柄な男性がいても、やはり少数です。それがカブトムシは、人間に当てはめれば、2m超の大男か、150cmの小男しかいないという。その戦略は「ずらす」ことにあります。

小さな角のカブトムシは、大きな角のオスと戦うようなことはできない。そこで「ずらす戦略」を選んでいる。
(「弱者の戦略」35%付近)

カブトムシのオスは明け方活動します。自分も子供の頃、カブトムシを探しに行くのは、夜が明ける前でした。
でも小さな角のカブトムシは、大きな角のカブトムシとは別の活動をするというのです。

角の小さなオスは、真夜中から活動を始める。こうして、まだ他のオスが眠っているうちに、エサもメスも手に入れてしまう作戦なのである。そのため、小さな角のオスはしっかりと子孫を残し、小さな角の遺伝子は受け継がれるのである。
(「弱者の戦略」35%付近)

強者と戦っても負けるだけ。マーケティングの世界であれば、返品、廃番ですみますが、生物の世界に待っているのは死。そして種の断絶。
だから小さな角のカブトムシは戦わずして、より一層早起きする。マーケティングであれば、コンビニという紛争地を避ける戦略もありということです。

コネルの中程度撹乱仮説は市場ライフサイクルと同じ

生き残りを賭けた戦いは、個体数の減少という結果となって表れます。では、強者のみが生き残る環境だけが、個体数を減少させる要因かというと、そうではないそうです。
1978年にアメリカの生態学者コネル(J.H.Connell)が提唱した「中程度撹乱仮説」の図があります。


(「弱者の戦略」52%付近。一部改変)

図が示すように、環境の撹乱程度が小さいと、強者が生き残るけれど、環境変化があまりにも大きいと、変化に対応できず、やはり個体数は減少するというもの。

これを私がかねて提唱しております「市場ライフサイクル理論」に当てはめてみます。
市場ライフサイクル理論は、あらゆる市場は「製品多様性軸」と「需要特性軸」からなる4つの象限を時計回りに回転するというもの。

「中程度撹乱仮説」の2軸を「生物多様性軸」「環境特性軸」とし、交差させると、そのまま市場ライフサイクル理論となります。

「開拓期」「安定期」に製品数(生物数)が少なくなる要因は1つではない。競争環境だけでなく、環境の変動が大きくても個体数は減少するのです。

すべての生物はナンバー1

弱者の戦略」は、自分が読んだKindle本の中で、最も多く「ハイライト」をつけた本となりました。とはいえ、生物学などに興味を持てないという方もいるでしょう。ただ、そんな方でもドキッとせざるを得ない文章もあります。

稲垣先生は、SMAPが歌った「世界に一つだけの花」の歌詞で話題になった「オンリー1」「ナンバー1」についても言及しています。

SMAPが歌う 「世界に一つだけの花」は、「花屋の店先に並んだいろんな花」である。人間が世話をしてくれる花屋の花であるなら、ナンバー1でなくとも、オンリー1であればそれでいい 。しかし、自然界であれば、ナンバー1になれる場所を見出さなければ生存することはできない。オンリー1とは、自分が見出した自分のポジションのことなのである。
(「弱者の戦略」42%付近)

「ポジション」という言葉が登場したように、これはまさにポジショニング理論でもあります。そして、上記に続く文章は、マーケティングにも、そして自分自身のポジショニング戦略にも当てはまることを示唆しています。

世界のどこかの場所で 、すべての生物はナンバ-1なのである。(中略)「ずらす」ということは、他の生物がナンバ-1になれない場所を探し 、自らがナンバ-1になる自分の居場所を 「探す」ことである 。そしてどんなに小さい場所であっても、ナンバ-1になる秀でた能力を持たなければならないのである。
(「弱者の戦略」42%付近)

いかがでしょうか? 「自分はオンリー1だから」という考えに冷水を浴びせるかのような文章ですが、これら以外にも動物・昆虫たちの興味深い生態が書かれていますので、経営戦略、マーケティング戦略の参考になること確実です。

最後に1つだけ、最も意外に思ったことを紹介しておきましょう。

ちなみに、オスのライオンが首のまわりに立派なたてがみがあるのも、オス同士の戦いで首を噛まれるのを防ぐためである。
(「弱者の戦略」70%付近)

メスに対し、より強く見せるためではなかったの!?

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