外食チェーンのブランド力を売上から比較してみた

マクドナルドに復活の兆し?

異物混入などから長く低迷していたマクドナルドに、ようやく復活の兆候が見えたと話題になっている。

マクドナルド、3月既存店売上高18.3%増 季節商品が好調  :日本経済新聞
マクドナルド、グランドビッグマック販売制限 久々ヒット  :日本経済新聞
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グランドビッグマックのCMには、横綱白鵬を起用。

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しかし昨今の白鵬は、審判員を骨折までさせた「ダメ押し」などもあり、好角家からのイメージは芳しくない。そんな「タレント」をキャスティングしてしまうところ、「ついてないな」と思っていたけれど、プロダクトそのものは好評なもよう。

以前から追いかけているファストフード系チェーンの動きを見てみると、たしかに回復基調にあるといってよい。ただし、ライバルのモスバーガーも、ケンタッキーも好調を維持している。

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日経の記事は、多少のお世辞含みというのが正直なところ。事実を厳しく取り上げているメディアもある。

「グランドビッグマック」ヒットに透ける衰え:日経ビジネスオンライン
【日本マクドナルドホールディングス】既存店売上高回復はまやかし 解決できない構造問題|財務で会社を読む|ダイヤモンド・オンライン

日経ビジネスのいう「衰え」とは、グランドビッグマックの販売制限をかけるような予測のミスはかつてはなかったという指摘。かなり厳しい見出しのダイヤモンドのいう「構造問題」とは、アルバイトを中心とした人手不足。

しかし問題はそれだけではない。
日本マクドナルドHDのサイトにあがっている月次レポートを見ていて、「えっ?」と思った。

マクドナルド月次レポート

昨年12月からようやく既存店売上高がプラスに転じた。しかし全店売上高よりも数字が大きい。
2015年12月は既存店売上高+8.0に対し、全店売上は+5.4。1~3月もそれぞれ4ポイント前後、既存店売上高が全店売上高を上回っている。これはいったいどういうことか?

既存店売上高を示す意味

上場している外食チェーンは、いずれも月次情報を公開している。基準とするデータは「売上高」「客数」「客単価」の3つ。さらにそのデータを、「全店」と「既存店」に分けて表示するのが常識。

そして、既存店とは開店後1年を経過した店舗のこと。つまり

新店効果を排除した売上高

ということ。

わかりやすい例の1つが鳥取のスタバ。

スタバ開店1カ月、連日の行列 鳥取、すなば珈琲も盛況:朝日新聞デジタル

都会に住む方々は、「スタバが珍しいんだねぇ」と上から目線でコメントしたくなるだろう。

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こちらはスタバの記念すべき日本1号店。つい10数年前、東京人はこぞってここに行列を作った。東京と鳥取の違いは、単なる順番の違いにすぎない。

1年ほど前に開店した鳥取のスタバ。今はどうなのだろう。行列はできていても、以前より短くなっていることだろう。いくら鳥取には珍しいスタバであっても、さすがに1年たてば飽きて当然。

外食チェーンに投資しようと考える人が既存店売上高を重視するのは、こうした一時的な売上を排除して考えたいから。そして、新店効果を含む全店売上高は、常識的には既存店売上高より大きくて当然だった。それが今のマクドナルドにはない。

「他のチェーンはどうなのだろう?」と調べてみたところ、各社各様の違いがみられたので紹介しよう。

ブランド力のある外食はここだ

「全店売上高-(マイナス)既存店売上高」で表される数値は、そのチェーンが持つ新規顧客の吸引力である。わかりやすくブランド力と言い換えてもよいだろう。

これまではマクドナルドと、ベンチマーク先としてモスバーガー、ケンタッキーの売上数字を追いかけてきたが、問題はファストフードだけにとどまらないかもしれないということで、今回は「CoCo壱番屋」「サイゼリヤ」という洋食系チェーンに、「吉野家」「すき家」「松屋」の牛丼3社に、「日高屋」「幸楽苑」という中華系チェーンの売上も調べてみた。

2012年1月以降の「全店売上高」と「既存店売上高」を調べ、その差をグラフ化した。
まずはマクドナルドをはじめとした洋風ファストフードチェーン。

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マクドナルドの数字の異変に気づいて調べたのであるが、2016年3月は3社とも全店売上高が既存店売上高を下回り、マイナスとなっている。たしかにマクドナルドは凋落した傾向にあったが、モスもケンタッキーも、強い新店効果を与えるほどの存在感はなくなったということ。

洋風のファストフードそのものが
ユーザーから飽きられつつある

というのが現実なのではないだろうか。

特に気になるのはケンタッキー。グラフの短い期間での振り幅が極めて大きい。外食チェーンとしての独自性はあるものの、パーティー需要がベースにあるため季節性も強く、さらにコンビニ唐揚げとの競合も激しいためだろうか。

同じ洋風系でも、ココイチとサイゼは、また様相が異なる。

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全店と既存店の差がほとんどなくなったサイゼは、一時の勢いは失われたといってよい。ライバルに先んじて、「サイゼ呑み」をさらに強化するのかどうか。次の一手が待たれる。

一方のココイチは、「ココイチ芸人」による効果があったが、それも落ち着いた。しかし、また浮上しつつある。郊外では漫画などを店内に置き、長時間居座ってもいいような店舗を増やし、新たな需要開拓を始めたことが功を奏しているのか。

吉野家の安定したブランド力

続いて、牛丼チェーン3社。マクドナルドの問題など比ではないほどの落ち込みは、もちろん「すき家」。数値軸(縦軸)をすき家に合わせるために、他のグラフの振り幅が、小さく見えてしまうことにご注意を。

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すき家はほぼ1年にわたり、全店売上高を既存店売上高が上回っていた。つまり、新店をオープンしても全く効果がなかった。その最悪期もようやく脱したか。
松屋も安定期に入ったといえる一方、改めてながめると、吉野家の安定ぶりが際立つ。新店効果も一定程度あるということは、ブランド力は落ちていないことを示す。

「吉野家が近所にできたから、ちょっと行ってみよう」
という気持ちになる消費者はまだいる

ということだ。
危ない橋は渡らない吉野家スタイルは、「吉呑み」の展開の遅さにも表れている。しかし、吉野家はやはりこれでよいのだろう。

最後に中華系の「日高屋」と「幸楽苑」である。

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安定して好調なのは、ちょい呑みで先行する日高屋。ライバル幸楽苑は2014年秋にかけ急降下していたが、ここにきて再浮上している。

店舗数では日高屋(381店、2016年3月末現在)、幸楽苑(510店、同)であり、牛丼3社に比べると、まだ開拓の余地はありそう。特に日高屋は、展開は首都圏のみ。今後、近畿・東海への進出はあるのだろうか。
また、洋食チェーンに比べ、中華系は新規顧客を呼び込むことは可能。特に女性需要の開拓は、まだ相当の余地があるはずだ。呑み需要以外の一手が待たれる。

外食チェーンの今後

外食チェーンは、人口減少や外国人観光客の増加というマクロ的な視点に基づく全体戦略と、商圏内人口というミクロの視点による個別戦略を、同時進行で行う必要がある。以前であれば、チェーンストア理論に則り、東京で成功したパターンをローカルに展開するだけでよかったが、そのような単純な戦略ではもはや成功しない。

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消費スピードが加速し、飽きられやすい時代に「新店効果」を発揮するには、オリジナルのフォーマットを持ちつつ、ひと手間もふた手間もかけた地域性あふれるイメージ戦略が欠かせない。その労を惜しまないチェーンがブランドを維持でき、ひいてはその地域で生き残ることができる。

各論ベースでは、スタバが発祥といってよいいわゆる「A看板」が、マクドナルドや吉野家でも見られる日が来ても、全くおかしなことではないということだ。

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かくて外食の現場は、ますます仕事が増えると思うのであります。

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