入社前教育という学業阻害
入学前教育
昨日は、来年4月に入学してくる合格者の第1回入学前教育。
この後、1月と2月にもやる予定。
集合しての勉強だけでなく、別に通信教育のようなテキストも送付し、課題としている。
AO入試で早期に大学進学が決定してしまうと、その後の勉強が疎かになる。高校側も困るし、大学としても、4月にダラけた状態で来られてもまた困る。今はどこの大学もなんらかのかたちで、こうしたことをやっているはず。
就職協定の度重なる変更
大学にとって入口である学生確保と、出口である就職活動は、学業・研究活動とともに、今や欠かせないこと。そんな「出口」について、今年、選考の解禁が8月となった就職協定が、来年度は6月解禁に前倒しとなる。
経団連会長、就活の面接解禁6月前倒し「1つのやり方」 :日本経済新聞
経団連また見直し 就活開始を6月に前倒し:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
自分のゼミ生たちは、おおむね解禁前に内定をいただいていたので、実質的な問題はなし。むしろ「暑いさなかスーツ着て就活なんてしたくないだろ? 早く動け!」と尻を叩いたものです。ましてや、経団連加盟企業など数少ないローカルでは、8月だろうが、6月だろうが、全く関係ない。
むしろ、それよりも問題視したいのが、内定獲得後のこと。
内定者研修という平日イベント
学生の就職活動により、学業が阻害されることが、時期見直しのポイント。しかし、大学教育の現場は、内定を得た後も問題は続いている。
それは、
内定者研修があるので、明日の授業休みます
というもの。
それは「懇親会」という名だったりもする。こちらとしても、企業との関係も良好に保ちたいから、モヤモヤとしながらも公欠のような扱いにせざるを得ない。
授業をやる立場としては、たまに欠席者がいるというくらいであれば黙認できる。
今日やったことは、他の学生に確認せよといえばすむ。
しかし、自分のイメージとしては、このくらいの感覚。
こうなると、どの学生がいる時に、どの話をしたのか、いちいちチェックしておかないといけない。もちろん出欠表と照らし合わせればわかることだけど、ゼミの時間にいちいちそんなこともしていられない。
大学は、高校生を欠席させるわけにいかないので、入学前教育は土曜日に行う。企業はその点おかまいなしなのか?
学業を阻害するのは、就職活動だけでなく、その後の入社前教育もあることを経団連の幹部はぜひ知っていただきたいものである。
つなぎとめ策はやむを得ない?
内定を早期に出す企業は、知名度のない中小企業が多い。そういう企業は、来年4月までの間、せっかく確保した人材を逃がしてなるものかと、あの手この手でつなぎとめる。マリッジブルーならぬ、「内定者ブルー」を避けるために、今やこれも当たり前のように行われている。
構造的には、中小大学が推薦入試で、合格を早く出すことと同じ。
ただ、推薦入試には専願とするものもあるから、その場合は他大学を受験することは許されない。高校生も担任や進路指導の先生の目があるから、無謀なことはしない。
その点、内定先企業と大学の関係は、高校と大学の関係に比べればゆるやか。だから、いくら「後輩たちのために」といっても、本人の意思が固いのであれば、内定辞退もいたしかたない。それを避けるために、企業はせっせとつなぎとめの企画をする……。
気持ちは痛いほどわかる。ただ。授業期間中の入社前教育はせめて土日にしていただきたいもの。休暇期間であれば、いくらやっていただいても結構。そこはきっちりと宣言してもらえないのだろうか。
さまざまなことがウヤムヤに進むことは、いかにも日本的であるけれど、企業も大学も国際標準を求められている時代。グレーゾーンは早期にシロクロはっきりすべきと思うのである。
2015/12/25