粉まみれのチャレンジと不適切な努力

やればできるは魔法の合言葉、だけど

超大企業のトップにまで上り詰めた方なのだから、相当なエリートなのだろうけど、昨晩の記者会見の場における表情は、やはり後ろ暗く見えました。質問する記者の方を見ず、資料に目を通すばかりでしたし。

田中氏「直接指示の認識ない」…東芝不適切会計 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
東芝を組織ぐるみで不正に走らせた魔の言葉「チャレンジ」 | 東芝問題リポート | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」

「やればできるは魔法の合言葉」という校歌を持つ高校があります。「やれば出来る」と信じて目標に邁進することは、決して間違いではない。
でも、それが単なる上からの押し付けであるなら、「悪魔の言葉」となる。

「チャレンジ」という悪魔の言葉がひとり歩きしてしまった東芝。第三者委員会による報告書の全文を読むには、あまりに時間がなさすぎますが、要約版の最終ページ「PC事業月別売上高・営業利益推移」のグラフを見て、これまで何も違和感を覚えなかったのであれば、それはもう関係者全員が悪魔に心を奪われていたのでしょう。

東芝:第三者委員会による調査報告書の受領と今後の当社の対応について
第三者委員会調査報告書<要約版>[PDF 1.33MB/84ページ]
第三者委員会調査報告書<全文版>[PDF 3.56MB/303ページ]

「不適切会計ではなく、粉飾ではないか」との問いに、「第三者委の報告書では『不適切な会計』と記載されている。それ以上の回答は控える」とかわした社長。「直接的な指示をしたという認識はない」ということが許されるのかどうか、甚だ疑問です。

静岡の「チャレンジ」に異論

「チャレンジ」と似たようなことは、実はあちこちで行われている。

今月上旬、静岡新聞紙面をこんな記事がにぎわしました。

2020年に出生率2.07達成可能? 静岡県、釈明に追われる | 静岡新聞

15072201

東京でオリンピックが開催される年までに、合計特殊出生率を2.07にすると静岡県がぶち上げた。それに対し、県議員らから「本当に実現できるのか」「最初から諦めているような数字」と疑問の声が上がった。

それもそのはず。2014年時点での、静岡県の合計特殊出生率は、

1.50
少子化対策、手詰まり感 静岡県出生率1.50に大幅下落
| 静岡新聞

なのですから。

しかも目標とする2.07という数字は、だいたい今から40年前の出生率と同じ。

15072202

元データは「厚労省・人口動態統計」より。

静岡県/少子化の現状(合計特殊出生率、未婚率など)
静岡県の少子化の現状に関する説明資料(PDF:804KB)

私が小学生高学年の頃です。家にカラーテレビはあったけれど、エアコンは1部屋あったかどうか。そんな時代。
その頃の数字に、今からたった5年で戻そうという目標。これが「チャレンジ」でなくて、何がチャレンジか。

もっとも公務員がダメなところは、仮にこの数字を達成できずとも、誰も責任を取らないところ。せいぜい知事が指弾される程度でしょう。そこが民間との意識の違い。

このチャレンジがどうなるのか、ちょっと見ものであります。

適切な努力とは

無謀な努力は馬鹿だけど、人間は時に無謀とも思える目標に突き進まないといけない。昨日と同じ仕事ばかりしていたら、人間は成長しません。

今回の東芝は、会社ぐるみで「不適切な努力」をしていたわけですが、では「適切な努力」とはどのようなものになるのか。

それは、一にも二にも遵法意識に基づいたものでしょう。遵法の「法」は、実定法に限らず、マナーやモラルといった自然法も含まれる。その一線だけは絶対に越えないという前提で、限界まで挑戦する。それで達成できなければ、できなかった理由を考える。自分の知識が足りないのか、会社のシステムが悪いのか。それを改善して、再び努力する。これが適切な努力というものなのではないでしょうか。

今回の東芝は、過去の同様の事例に比して、「Too Big」だから「To Fail」なのかもしれませんが、公平性を欠く「判決」は、疑心暗鬼を生ずるだけ。企業の体は守ることができても、企業ブランド回復の道のりは、はてしなく遠くなる。

結果として、どちらに進んでも茨の道が待ち受けているのではないでしょうか。

結婚した当初、揃えた家電品のほとんどは東芝製品だった。そんな思い入れもある企業だけに、これからは適切な努力を続けていただきたいものであります。

 

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