サントリーモルツがザ・モルツで復活?
まだ売っている
なくなるというと、記念に買っておきたいと思うのは、鉄ちゃんが廃線に殺到する構図と同じ。
バローではなぜか売っているんですよね。
このパッケージのは、もう二度と飲むことはないと思うので、買ってまいりました。たぶん20年ぶりくらいに、まともに飲んでみました。
いや~、こんな味でしたっけね。案外美味しい。後からくるほのかな苦味が、妙に新鮮でした。
モルツ~♪モルツ~♪モルツ~♪モルツ~♪
いやというほど流れたCMは、もう20年前のこと。
今の若い方は、YAZAWAのプレモルは知っていても、ショーケンのモルツは知らないでしょう。
あの頃はビールを代表するブランドの1つでした……といいたいところですが、現実は甘くない。CMの印象が強いだけで、モルツはそんなに売れていなかった。といっても、今と比べたら隔世の感ですが。
当時勤めていた会社で購読していた「日刊食品通信」に掲載されていた数字をこつこつ拾って、積算したものです。
年間販売数量は、1994年から2000年までのものしかありませんが、ピークはここにある97年のはず。ただ、同じサントリーの発泡酒「スーパーホップス」に、すぐに追いぬかれてしまった。
スーパードライが、ラガーからトップブランドの座をついに奪ったのが97年。98年には一番搾りとの合計でもアサヒがキリンを大逆転。
かつてはシェア60%超。独禁法から会社分割という冗談交じりの噂も流れるほど栄華を誇ったキリンが、ついにアサヒに敗れた。日本のマーケティング史に残る大事件があったのだから、下位ブランドはなすすべもなかったというのが当時の実感です。
反応はやや微妙
新しいモルツのデザインは、現行のPBに似ている。
「サントリー ザ・モルツ」新発売 2015.6.23 ニュースリリース サントリー
画像はサントリー公式サイトより
マスコミやネットの反応は、やや微妙。
サントリーが「ザ・モルツ」で定番ビールに殴り込み! その味は? - 日経トレンディネット
サントリー、「モルツ」終了→寂しい でも「ザ・モルツ」新発売→何が変わるの? : J-CASTニュース
サントリー「ザ・モルツ」で激化必至の勝者なきビール戦争|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン
少し前からアメリカで「UMAMI BURGER」なるものが発売されている。「味の素」が作り出した(発見した)第6の味覚「旨味(うまみ)」は、今や世界語になりつつある。だから「UMAMI」を前面に押し出すことは、世界戦略と考えれば間違っていない。
ただ、そうはいっても国内での足場を固めたいのは当然のこと。その際、「プレミアムモルツ」がなまじっかプレミアムビールのトップブランドになってしまったことが、足を引っ張ることになる可能性がある。
サントリーが避けたいこと
ビールジャンルのすべてで、最も売れているのはアサヒスーパードライ。いまだ1億箱を売る強さは、他ブランドの追随を許さない。
そのアサヒは、スーパードライのサブブランドとして「ドライプレミアム」を配置している。パッケージも色が異なるだけで、スーパードライのイメージをうまく利用している。
一方、プレミアムビールといえば「エビス」。プレモルやドライプレミアムの攻勢に押され気味ではあるものの、ブランド感はいまだダントツか。
エビスを発売するサッポロビールの定番ラインは「黒ラベル」。エビスとは異なるブランドで展開する。
そしてサントリー。プレモルは年間1500万箱ほどを売っているといわれる。その「元ブランド」である「モルツ」は400万箱だった。
つまり定番とプレミアムを抱える3社ではあるが、それぞれの見え方はこのようになる。
アサヒはあくまでもスーパードライが中心。プレミアムとはいえ、ドライプレミアムはサブブランド。
サッポロは黒ラベルとエビスは全くの別物。
ところが、サントリーはプレモルが断然の主力となった。だから「ザ・モルツ」は、「プレモルの下位互換」と見えてしまうのではないか。ちょっと厳しい言い方をすれば「安っぽいモルツ」と受け取られてしまう。
おそらくこういった印象となることを避けて、パッケージデザインをプレモルと全く変えたのだろう。ただ、ネーミングからは同じとみられる。このあたりの問題点を得意のプロモーションで、どのように補うか。ここが「ザ・モルツ」の注目すべきことです。
発売はまだ先の9月8日。秋から冬に向けて、サントリーに限らず、ビール各社の定番ビールブランドの熱いプロモーションが展開されそうです。
2015/12/07