私語の多い大学授業という問題

日経コラムの春秋

G型・L型大学や、その後の「小学4年生の中村君」ほどは話題にはならなかったけれど、個人的に「むむっ!」と思ったのが、この日経コラム。

大学の教壇に立った経験のある会社員や研究者が集まると、共通して話題に出るのは私語の多さだ。講演会などで内容に関心がわかな  :日本経済新聞

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要は昔は私語が少なかった(といっても、たぶん筆者の書き方からすると昭和初期とかのこと?)。その理由は、当時の大学教員が、授業時間の40~60%しか実質的な授業を行っていなかった。だから「昔」の学生は、私語をする間もなく、必死に授業を聞いていたのだろうという論。

一方、今の学生は、出席は必須。半期15回の授業を、4回休んだら、自動的に不可。これが常識。だから教室にいざるをえない。でも授業はつまらない。結果として、まわりにいる友人との私語をはじめる……というもの。

この内容に対し、ネットの意見として散見されたのが、

お前が面白い話をしないからだ!

というもの。

まあこう考える人は多いのでしょう。でもこの論には安易に同調できない。そもそも「面白い」とは何かということ。
ケーススタディ中心にすれば、興味を引くことは可能。ただ、全15回そればかりじゃ、授業が成立しない。時に理論的なことも挟まなければ、講義になりません。

それともまさか話題の芸能界の事件の話を盛り込む? 昨日のプロ野球の結果を嘆いて、自分はどこのファンだと暗示する?
セミナーをはじめとした講演であれば、それでもいい。

でも授業と講演が決定的に違うのは、

成績をつける

ということ。
お金をいただいて、喜んで帰っていただくだけなら、話を盛り上げるだけ盛り上げればいい。内容が脱線してもいいでしょう。でも授業はそうではない。15回終えた後に成績をつける必要がある。

成績をつけるためには、試験かレポートを課す必要がある。その試験・レポートはどのように採点するのか。15回の構成が論理的でなければなりません。

90分×15回の授業時間のすべてを、興味を引きつけ続けられる教員がいるのであれば、ぜひ見学してみたいもの。サンデル先生だって、15回のうちには、中だるみがあるはず。もちろん自分の授業にもある。
ワーワー盛り上げるだけでなく、少し堅苦しいけれど、理論を説かねばならない場面が必ずある。学習意欲の強くない学生に、いかにそこを理解してもらうか。ここだと思います、教育の難しいところは。

授業にバカ話は必要か?

「おもしろい授業(講演)」というテーマについては、もう1つ、ずっと気になっていることがあります。それは、先生が生徒・学生の興味を引くために、バカ話をすること。

これを気になり始めたきっかけは、自分が大学で授業を教えるようになった頃のこと。リクルートOBであり、当時杉並区の中学校校長をしていた藤原和博さんの言葉でした。

それがどこに書かれたものなのか、今となってはソースをたどることもできませんが、その内容は、

1コマわずか50分の授業でプロ野球のナイターなどの話をし、生徒の興味を引く余裕はあるのか?

というニュアンスだった。

50分授業というのは、恐ろしく短い。これは、高校への出前授業をすると、ものすごく実感します。90分という単位にカラダが慣れていると、50分はあっという間。肝心なことを伝えようとする前に終わってしまう。

高校の先生であれば、週に例えば3コマ持っていれば、50分×3コマで考えればよいのかもしれない。でもこちらは50分1本勝負。余計な話なんてしてられません。だから藤原さんの論に、「たしかにそうだよな……」と実感しました。

そしてたぶん同じ頃だったと思うのですが、NHKスペシャルでインドをやっていた。貧困を抜け出すために、吹きさらしの教室でぎゅうぎゅう詰めになりながら、授業を受ける人たちがいた。その姿を見て、この指摘は心にさらに深く突き刺さった。

残念ながらYouTubeにその動画はありませんでした。なぜか隣国の動画サイトにありました。問題はありましょうが、いちおうリンクを貼っておきます。
動画が始まってすぐに、その教室の場面を見ることができますので、そこだけでもぜひ見てみてください。
この教室で教える教員が、ウケを狙った話をするでしょうか? 前日のクリケットの試合で盛り上げようとするのでしょうか?


そして、日本にこれだけの熱気がある教育現場は、今どれだけあるでしょうか。

学校は何をする場なのか?

学校は、知識を得る場。もしくはそれを実践する場でもある。
目的は本来はっきりしている。なのに、面白く話をしてもらわないと注意が散漫になる。盛り上がる話をしてくれないと、記憶に残らない。いったい何をしに来ているのでしょう?

中学校はまだしも、高校は義務教育ではない。大学進学率50%、全入時代の前に、今一度「教育」というものを、学び手側も再確認する必要があると思うのであります。それなくして、大学再生もないはずです。

 

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