キリン「別格」はNBのPB
佐藤可士和作品再び
ウィダーinゼリーで一敗地に塗れた佐藤可士和氏。しかし人気は引きも切らないようで、今度はキリン(ビバレッジ)の大型ブランドのプロデュースを担当されていたようです。

画像はキリンビバ公式より。
「キリン 別格」ブランド誕生!|2014年|ニュースリリース|キリン
まだまだ、だいぶ先の11月発売なのですが、自分のまわりではすでにかなり話題に。
多くの方はネーミングが気になっているようす。
たしかに「別格」という言葉は、主体的に使う言葉ではない。他者が、
あいつは別格だよ
という風に使う。
私、別格なんです
とは言わない、常識的には。
このネーミングからくる直感的感覚を、ユーザーがどのように捉えるか?
ユーザーはどこまで敏感でしょうか。
それよりもキリンビバの意図
自分は、ネーミングについては、さほど関心ナシ。それよりも「お茶」「コーヒー」「炭酸飲料」という異なったジャンルの商品を一堂に会するブランドを、なぜ立ち上げたのかということが気になりました。
これは要するに、
セブンプレミアムが気になってしょうがなかった
ということでしょう。
図に表すと、こういうことです。
キリンビバをはじめ、通常の飲料メーカーは、緑茶は緑茶のブランド(キリンビバは生茶)、烏龍茶は烏龍茶のブランド(いちおう極烏というブランドがある)、紅茶は紅茶のブランド(もちろん午後ティー)と、それぞれにブランドを立てねばならない。
その一方、セブンプレミアムはそんなことは気にしなくてよい。「緑茶」「烏龍茶」という製品ジャンル名をそのままネーミングとし、それを傘ブランドとしてセブンプレミアムで覆えばいい。ブランド管理が驚異的にラクです。
キリンビバのみならず、他の清涼飲料メーカーは苦々しい思いで、セブンプレミアムを見ていたでしょう。
そこで「別格」
そう考えると、今回のこの「別格」というブランドは、セブンプレミアムに相当する位置づけのブランドということになる。果たして、こういうやり方が、メーカーに可能なのか?
一般にブランドの階層構造は「企業ブランド」「商品ブランド」に、ロングセラーブランドの証といえる「属性ブランド」で整理できる。
カローラ、ポッキー、野菜生活。いずれもロングセラー商品。そして、それぞれ当初は単なる「カローラ」「ポッキー」「野菜生活」という1アイテムの商品だった。それが爆発的人気を得て、ラインエクステンションし、結果として、これらのメインブランドは商品ブランドから属性ブランドに昇華したといえる。
キリンビバレッジは、これをいきなりやろうとしている。まだ発売してもいない商品に、いきなりロングセラーブランドと同じ重荷を課した。「別格」がそれに応えられればよいのですが、はたしてそこまで期待できるかどうか。
昨今人気のプレミアムラインのブランドとはいえ、かなりの冒険といえましょう。
NBのPB
NBメーカーとすれば、セブンプレミアムはまったくもって苦々しいブランド。品質はおしなべて高いうえに、セブンの好きなように陳列できる。さらに人気は堅実。これ以上強いものはありません。
そして自分たちも、その片棒を担がされているということもある。だから真似したくなる気持ちもわかる。
ただ、NBメーカーに同じことが可能なのかというと、それは別問題。だいたい、ユーザーはそんな細かいところまで理解できない。「別格」が飲料ジャンル横断のブランドであることを、ニュースリリースを見ずして理解できる人は少ないでしょう。
話は飛躍してしまいますが、「別格」が「セブンプレミアム」を少しでも意識しているのなら、せめてデザイナーを佐藤可士和さんから変えなければいけなかった。
なぜなら、かのセブンプレミアムのデザインも佐藤可士和さん。
佐藤さん的には、どっちに転んでも美味しい。というより、よく引き受けたなというのが、正直な感想。
発売はまだまだ2か月近く先の11月4日。いったいどんな結果となるのか。お歳暮需要も見越しているようなニュースリリースですが、そのような流れになるのか。
発売前から別格的な注目を集める「別格」なのであります。
2016/07/18