十六日目: ジャストシステムの経営の方向性


「ジャストシステム」は、ご存知でしょう。あの一太郎のジャストシステムのことです。何でも、日本開発銀行に1千億円の融資の要請をしているみたいです。
今時、開銀に融資をお願いすること自体、「大丈夫ですか?」と聞きたくなります。なぜなら、開銀に融資をお願いしている有名企業の筆頭は、どこあろう、あの「ダイエー」なのですから…。
ということで、あなたが「ジャストシステム」に対して、経営コンサルタントの立場から、現状の改革案・経営の方向性の策定などを提案するとしたら、どのようなものになりますか。

現在最も必要とされ、且つ今後最も伸びる分野はインターネット関連しか考えられません。

まず、インターネット接続が容易な、というよりは作ったものが、そのままホームページやメールとなるアプリケーションの開発は必須でしょう。とはいってもネット関連は、ジャストシステムの不得意分野であり、さらに、マイクロソフトは、既にネット直結のアプリケーション開発を、ほとんど終えています。
ですので、今さらジャストシステムが、ネット関連に乗り出しても、良くて現状維持、伸びることはありえません。
しかし、その現状維持を、まずは目指さなければ、すぐに滅びます。
まずはマイクロソフトの真似でもよいので、ネット接続の容易なアプリケーションを早く世に出し、会社の存続を図ることが重要でしょう。

ジャストシステムは、ワープロの他にも、表計算、データベースなど、一通りのオフィス関連アプリケーションを持っています。一つ一つをとれば、決してマイクロソフト製品にひけをとらないにも関わらず、大きく引き離されているのは、言うまでもなくOSの力です。
大元のOSを握っているメーカーが、OSの発売と同時にプレインストールで、アプリケーションを載せて発売するので、後からお金を出して買わなければならないソフトメーカーは、大変不利なのです。
何億本も流通している、タダのソフトに対抗して売らなければらないので、必然的に価格を下げざるを得ません。ジャストシステムだけでなく、マイクロソフト以外のソフトメーカーは高い開発費をかけて、少ない流通量の製品を安く売らなければならないのです。

この状況から脱却するには、マイクロソフトからの脱却をしなければなりません。ウインドウズからの脱却を目指さなければならないのです。
もちろんそれは、Macと組めとか、自社でOSを開発しろといったことではありません。1年前までは、Winからの脱却など、夢のまた夢。会社の破滅を意味していました。

ところが、この1年で、その状況を覆すOSが出現したのです。「リナックス」です。
今のところ、Winを完全に駆逐するとは考えにくいのですが、今まで、マイクロソフト主導の状況に耐え抜いてきたコンピューター系の企業は、ここぞとばかりにリナックスにシフトしており、近いうちにWinに対抗するOSになりそうです。

既に、日本の2割の企業が、サーバーにリナックスを導入しているとの話を聞きました。この機を逃す手はありません。
都合のよいことに、リナックスは入手がタダ。そして、ソースコードが全て開放されています。アプリケーション開発の上で、これほどすばらしいOSはありません。
世の中の、ほとんどのコンピュータ系企業の、アンチマイクロソフトの流れに乗り、リナックス対応製品をいち早く開発するのが、生き残る道だと考えます。

では、どのようなスタイルで、どのような製品を開発するか。
企業規模を大幅縮小し、「一太郎」に賭けるのが最も有効ではないでしょうか。

ソフトウェアは一発ヒットが出ると大儲け、の代わりに失敗すると倒産の危機です。そういう意味では1製品にかけるのは、企業として非常に危険な選択であるといえます。
しかし、ジャストシステムが、表計算やDBソフトを作りつづけて、勝ち目があるでしょうか。私はとても勝てるとは思いません。表計算ではロータスが、DBではORACLEが、ジャストシステムと同じような立場で復権を狙っているのです。
ジャストシステムは「ワープロ」なのです。

しかし、現状では他社製品との差別化が難しいのも事実です。そこで。
ジャストシステムは、「一太郎」という素晴らしいワープロの他に、「ATOK」という優れたFEPを持っています。これがMS―IMEやEG―BRIDGEなど、他社製品に比べ、非常に優秀だという認識は誰もが持っています。
この「ATOK」の資産を利用して、文書校閲校正ソフトを開発します。

最近は、どのワープロにも簡易的な校正機能がついていますが、本格的文書校閲校正ソフトとして、HTMLなどを介して、どんなソフトの文章にも対応できるように設計し、オフィス文書を作る際の仕上げとしての必須ソフトとして売り出すのです。

もちろん、これは「一太郎」を売るための付加価値で、「一太郎」には標準装備。「一太郎」を買えば、タダでついてくるようにします。

ワープロソフトは、最も多くの人が使用するソフトで、一度使用すると、なかなか他社製品にスイッチしにくいものです。
ですので、リナックス黎明期のうちに、他社製品より優れた付加価値のついたワープロを早く開発して、先手を取り、「リナックスには一太郎」のイメージを消費者に植え付けるのです。

もうひとつの付加価値は、画像取り込みの容易さ、幅広さです。
ワープロに特化するわけですから、一太郎には様々な機能を盛り込まなければなりません。
今までのワープロの観点は捨て去り、DTPソフト的な、「自由な白い紙」として開発するのです。
実は、この部分が最もMS―WORDの弱いところです。画像取り込みに圧倒的に優れている、画像を取り込んでも重くならない、豊富な画像が用意されている、などをウリにすれば、MS―WORDからのスイッチは、必ず起こるはずです。

このような製品構成、開発をする上で、企業のスリム化は必至です。
この先、ワープロソフト単体の価格を上げることは考えられません。優れたワープロソフトを、薄利多売で販売していくしかありません。それには、不要な他のソフトの開発費を削り、ワープロソフトに関わるだけの人員を残し、小回りのきく精鋭集団にする必要があるでしょう。

見習うべきはオラクルです。オラクルは、ひたすらデータベース一途です(最近ではグループウェアなど他分野の製品を開発していますが)。
先ほど、オラクルも復権を狙っていると書きましたが、オラクルだけは、マイクロソフトに負けたわけではありません。データベースエンジンといえば、SQLサーバーではなく、オラクルなのです。

オラクルは、基本OSにUNIXを選びました。最近ではWin版も出していますが、マイクロソフトにそっぽを向かれても、倒産するわけではありません。マイクロソフトに擦り寄ることより、UNIX上で動くことによる製品のクオリティを選択したのです。そしてそれが多くの企業に受け入れられています。

ワープロソフトはデータベースと違い、誰でもが使うものではなく、単価も非常に安く設定されています。単純に、ジャストシステムとオラクルを比較するのは難しいでしょうが、OSをマイクロソフトに握られている状態で、その土俵の上で商売を続けても、勝ち目はありません。

マイクロソフトからの脱却 = リナックス製品の早期開発
ワープロに特化した上で、製品クオリティや付加価値の向上、
そして、精鋭ワープロ開発集団に絞って企業をスリム化する、
この3点が、ジャストシステムが生き残る道だと考えます。

なるほど、リナックスと手を組めと。リナックスの可能性は、どうなのでしょう。今の勢いだと、三〇%くらいのシェアは、確実に行きそうな気配はありますね。
ただ、リナックスの拡大に手を貸してしまうと、ビルゲイツは怒るのではないでしょうか。いや、別に彼が怒ったからといって、またエゲツないことをやれば、アメリカの司法省に訴えればいいのでしょう。その点は、安心(?)です。
ただ、今、ウインドウズに乗せている一太郎は、今後、「乗せてもらえなくなる」ことはないのでしょうか。これこそ、排他的な行為ですから、罰せられる可能性は十分にありますが、「道義的に」(経営的にではなく)ウインドウズに乗せることはできなくなりそうな気もします。消費者の目に、どのように映るかにもよりますが。

ハードやソフトのことは、正直あまり詳しくもないので、私は、「浮川夫妻」のことについて、考えてみましょう。
彼らは、どうすべきなのでしょうか。優秀な経営者をヘッドハンティングして、社長に据えるべきではないのでしょうか。

最近、スティーブ・ジョブスに始まって、コンパックの社長も、いずれも創業者に戻っています。これは、何を意味しているのでしょうか。
私は、パーソナルコンピュータは、「最先端機器」でありながら、まだまだ「未成熟な商品」なのではないかと思うのです。
結局、メモリが何メガだとか、CPUが何ヘルツだということが、PCの基本要素なのではなく、「それを作った人が好きだから買っている」のではないかと。

ここで、アップルのことを考えてみます。
アップルの経営が、極めて危ない状況にあったとき、創業時代から比べれば、経営戦略は、非常に優秀なことを考えていたはずです(その結果がどうこうではなく)。
ただ、アップル自身が、爆発的なヒット商品でありえたのは、2人のスティーブが、「本当に誰もが使いやすいPCを作ろう」と思い、それを製品化したからであり、当時のアップルを買った人は、彼らのポリシーに共鳴して買った人が大半でしょう。
それが、2人の引退とともに、アップルのポリシーが、ユーザーに見えにくくなり、その間に、コンパックやデルなどの、新興企業が「ユーザーフレンドリーなイメージ」を、アップルから奪い取ってしまった。

アップルの危機は、要は、「アップル自身の個性の喪失」が問題だったのではないでしょうか。だから、「iMac」について、たしかに「デザイン重視」という戦略を取ったことは、賞賛されるべきなのでしょうが、では、今のCEOがジョンスカリーだったら、同様な大ヒットであったのか、確信は持てません。むしろ、「何、子供だましやってるんだ」と思われてしまったのではないでしょうか。
「iMac」を最前線で売ってくれた人が、ビジネスマンとしてではなく、アップルの創業者であったスティーブ・ジョブスだったから、皆、そのコンセプトに共鳴したのではないでしょうか。

そして、浮川夫妻です。ご存知のように、彼らは、夫が経営者で、妻がソフト開発者という役割分担をしており、ジャストシステム自体が、日本を代表するベンチャーの典型例として、あちこちで取り上げられていました。でも、私は何となく、共鳴できません。なぜなのでしょう。

それは、彼らが「何と戦ったのか、今一つわかりにくい」からではないでしょうか。
アップルは、「PC自体を広める」ということと戦い、MSは、「IBMという巨人と戦い」、リナックスは今「巨人となったMS」と戦った(戦っている)というイメージがあります(あくまでもイメージです)。
ジャストシステムは、「誰と戦った」のでしょうか。今は、MSと戦っています。これはいいでしょう。
ジャストシステムの企業としての成長の過程において、「独占的な電機メーカーに真っ向勝負した」ということがあったのでしょうか。私の知る限りの知識に基づいたイメージは、大手電機メーカーに「うまく擦り寄った」という感じです。大企業に迎合しながら、コバンザメのようなことをしながら、規模を拡大してきたような…。
違うのでしょうか。

ここはひとつ、夫妻に引退してもらいましょう。すると、間違いなく経営は、さらに危なくなる。会社の規模も、自ずと縮小されていくでしょう。そして、縮小しきったところで、「夫妻の復活」です。やっぱり、夫妻ではなくてはダメだと。
このときには、マスコミに、「夫妻の歴史」(=ジャストシステムの盛衰の歴史)をあちこちで取り上げてもらい、「ベンチャーイメージ」を高めます(復活させます)。そして、共鳴してもらえる人を増やしていく過程で、リナックス軍団に加わっていけばいいのではないでしょうか。

せっかく、会社を大きくしたのに、「またやりなおしかい」ということは辛いでしょうが、考えてみれば、いつまでも、「我が子のような会社」を一人前の会社と思えず、「親離れできなかった夫妻の責任」もあります。だから、一度リスタートをかけて、立ち上げからやりなおしましょう。
★ では、ビルゲイツはどうなのでしょう。彼も、早いところ引退して、MSが危なくなった頃に「復活」すると、今のマイナスイメージが一気に払拭されるように思います。でも、それにしては、ヤツは金持ちすぎるか。




おもしろいっす。MSのマイナスイメージを払拭するために、ビルゲイツを引退させたら、復活する前に暗殺でもされそうですね。

創業者がとっくに死んでしまった日産には希望の灯はないのですね。

たぶん、ジャストシステムはそういう方式をとっても、復活はしないでしょう。アップルは、スティーブ・ジョブスがいなかった時代も、熱狂的なマックファンがいました。というよりスティーブ・ジョブスの創ったマックのコンセプトが、そういう人達をつくったのでしょう。

今、一太郎のコンセプトに共鳴して、浮川夫妻が辞めている間、一太郎を熱狂的に支持する人がいるでしょうか。
ワープロソフトが変わると、ついて行けない頭のかたい人には、支持されるかもしれませんが。

私は、最初に売れている時点でのコンセプトで、その後が決まっている気がします。スティーブ・ジョブスだから、マックだから生き残れたのであると思います。ジャストシステムやMSなど、最盛期にコンセプトを感じられなかった企業や製品は、創業者が辞めて失速したら、それっきり終わりじゃないでしょうかねー。

 

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